第2話:1日30分

10月中旬、初めての勉強会。

久しぶりにあっくんに会える。


あっくんはまた背が伸びてて体つきも大人みたい。

私の自転車も片付けてくれたり、階段でも後を歩いてくれる、優しいな。

あ?スカート短かった?


「あっくん、あっくん、あのね?お弁当作ってきたんだ。一緒に食べよ」

はるか、料理とかできたんだ、期末前にお腹とか壊したくないんだけど?」


「ひどいよーじゃあ、食べないでもいいですー私が二つ食べてぷくぷくになるもん」

「揶揄っただけだから、ごめんて、ありがとう一緒に食べよ、飲み物買ってくるから待ってて?何がいい?」


「むー、あったかい紅茶」


何気ないやり取りが楽しくて、嬉しくて、いつもと変わらない感じでふざけあえる。

やっぱり好きだなーって思ってお茶を買ってるあっくんを見て微笑むと。

あっくんも少し赤くなってにこやかに笑ってくれた。


はるか、どうした?だらしない顔してるよ?あ!よだれ!」

「え?え?嘘!」

口元を確認したけど出てない


あっくんが笑ってる。可愛いな。

笑った顔が子供の頃のままだ。


「もーあっくんのいじわる!明日のお弁当はお肉抜きです!」

「あああ、ごめんなさいごめんなさい、お願いします。お肉多めで」

「何それ、なんで増えるの?」

「好きだから」


ん?お肉のことだよね、そうだよね?思わず頬が熱くなる。

恥ずかしくなって俯いてチラっとあっくんを見ると


あっくんも顔が真っ赤……。

だけど真剣な目で微笑みながら

はるかとこうやって一緒にいる時が昔から好きなんだよ、だからさ」


「俺の彼女になってください、子供の頃からはるかが好きでした」


嬉しくて、びっくりして、恥ずかしくて、でもやっぱり嬉しくて

「あっくん、私ね中学生になってから告白とかされるようになったんだ」

「でもね、いつも断ってるの、好きな人がずーっといるから」


真剣だけど不安そうに見てるあっくんの顔。

涙が一筋頬を伝う。微笑みながら

「嬉しい、彼女にしてください。私も子供の頃からあっくん大好き」


あっくんが両手で頭を抱えて

「あーーーもっとさ、雰囲気とか場所とか選んで伝えようと思ったんだ」

「でも、はるかがどんどん可愛くなってさ、誰かの彼女になるのは嫌だから」


言葉が溢れて止まらない。

「あっくんだって背が高くなってかっこいいし、彼女いたらやだなって」

「受験が終わったら告白するつもりだったの、でも告白してもらいたかったの」

「だからねお料理とかおしゃれとか頑張ったんだよ、ずるいね、でも嫌なの、あっくんは私のあっくんじゃないと嫌」


照れながらあっくんが

「だからはるか、明日のお弁当は肉いっぱい入れてよ」

「だめ〜バランスよく食べないとだめなの、大きくなれ…もう結構大きいね」


いつもみたいにふざけて、でも少し安心して嬉しくて。

大好きだよ、あっくん。好きって言ってくれてありがとう。


これからは、あっくんは私の彼氏で、私はあっくんの彼女なんだよね。


そんな大好きなあっくんにも絶対に言えないの。






私が1日30分時間を止められることは






小学5年生で私は初潮を迎えた。


その翌日、学校を休んでお母さんとおばあちゃんに会いに出かけた。

おばあちゃんは目を細めておめでとうって言って頭を撫でてくれた。


それから長細い箱を二つくれたの。

どっちも腕時計。

一つは日常用、もう一つは一生使える機械式なんだって。


なんで腕時計なんだろって思ったけど、ピカピカの腕時計が大人になった印みたいで嬉しかった。


おばあちゃんが「1秒をしっかり感じるようにね」って言ったけど、

時間を大切にってことなのかな?意味がわからなかった。


おばあちゃんとお母さんとの秘密。

それは1日30分だけ時間が止まった世界を過ごせること。


そんな物語みたいなことがあるなんて、もちろん信じられなかった。

でも、お母さんとおばあちゃんは真剣に、そうなっても慌てないようにって

心構えを教えてくれた。


・目を閉じて頭の中で30秒数えること

・その間、ゆっくり深呼吸をすること

・次に腕時計を見て針が止まってるかどうか確認すること

・近くに人がいるか確認すること、

 いる場合はその場所から動かないこと


この4点を覚えておきなさいって。


不安そうな私をお母さんがそっと抱きしめて、優しい声で

「とにかく落ち着いてね」背中をぽんぽんと子供みたいにさすってくれた。

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