時間の使い方

空色 鈴

第1話 遥とあっくん

ポコポコとカカオの香りが1LDKの部屋に広がる。


まだ少し肌寒い4月、軽くメイクして制服に袖を通してダイニングに座る。


鏡を見ながら前髪のチェック。

よし!今日も可愛い!


お気に入りのマグカップにサーバーから注いだコーヒがふんわりと湯気を立ててる。


コクンと一口。

カカオの風味と苦味が広がってふ〜って息を吐く。


このゆったりとした時間が大好き。


ローファーを履いて、

お弁当が2つ入ったトートバックと

通学鞄を片手で持ってドアを開ける。


少しひんやりするけど、春の匂いのする風が心地いい。


3階から階段で降りて、

エントランスを出た。


周りに人がいないのを確認して……





時間を止める





私、水嶋みずしま はるかだけの30分。


匂いも風も何にも感じない、

全てが静止してる世界で私だけが歩いてる。


次の角を曲がれば、待ち合わせの小さな公園。

彼氏の敷島しきしまあきらくんことあっくんを見つけて小走りになる。


時間を止めてから、ここまで5分24秒。


ベンチで動かない彼の隣に座って、

肩にもたれてそっと目を閉じる。


幸せの時間、29分25秒に頬にちゅってキスをしてから角まで歩いて戻る。


30分。


角を曲がって彼が座ってるベンチに小走り。


「おはよう!あっくん!」

「おはようーはるか、今日も元気だね」


通ってる高校まで二人でゆっくり歩いて20分20秒〜42秒。

校門まで恋人繋ぎで寄り添って歩く。


繋いだ手にじんわり体温が伝わる。

嬉しくてにぎにぎ動かすと、ぎゅっと握り返してくれる。

にっこり笑って腕に頭を擦り付ける。


あっくんも照れてるけど笑顔を返してくれる。


毎日一緒に歩いてる通学路。

あっくんと一緒だからキラキラしてるのかな。









私、水嶋みずしま はるかと彼氏の敷島しきしま あきらくんは


お母さんの従兄弟の子供があきらくんだから、はとこ同士。

初めて会ったのは4歳くらい?おじいちゃんの家。


あきらくんだから、あっくんって子供の頃から呼んでるの


おじいちゃんとおばあちゃんは事業で成功しててお金持ち。

その事業を親戚でさらに大きくしてるみたい。


悪い人も寄ってくるけど、

なぜか遠ざかって行くんだって。


親戚は仲良しで1カ月も開けずにおじいちゃんの家に集まってた。


近い年齢の子供は5つ上の従兄弟のお姉ちゃんと、まだお腹の中にいる赤ちゃん。


だから自然と二人でいる。

いつも一緒に遊んでた。


小学校高学年になるとお互い照れがあるものの、学校が違ったせいなのか、

普通に仲良くしてた。


中学校に上がると、あっくんは急に背が伸びてカッコよくなった。

それでも普通に仲のいい親戚みたいなお付き合い。



そして中学三年生になった今、学校でも恋の話が多くなって。

あっくんが彼女とか作ったら嫌だなって思ったのが最初。


私はもう、あっくんのことを好きになってたみたい……

早く会いたいって思うくらいに……。


言葉は少なくなったけど、子供の頃みたいにいつも隣にいてくれて……。

そんな優しい接し方に、ほんわかと温かい気持ちになる。


私のことはどう思ってるのかな。

可愛いって思ってくれてるかな?


学校で告白されることが増えてきたけど、その度にあっくんの顔が浮かぶ。


お断りの理由はもちろん「好きな人がいる」本当にそうだから。


大学生の従兄弟のお姉ちゃんに相談してみると

はるかちゃんは可愛いなぁ、あきらくんもはるかちゃんのことは意識してると思うよ」

「どっちかが告白したら、あっさり付き合えるんじゃないかな?」


もちろん、連絡先は交換してるし、LAINだってしたことある。

勇気を出して、高校はどこに行くの?ってメッセージを送ったみた……


同じ高校。嬉しい、神様ありがとうって心から感謝した。


合格したら告白しよう。私の中では当たり前みたいに決まってた。


でも、まだ10月初旬、

受験結果は2月。まだ4カ月も先。


でも、もっと会いたいし話もしたい。

勇気を出して、じゃあ一緒に勉強しない?って誘ってみた。

あっくんから誘ってくれたらな…。


返事はあっさり「いいよ」の3文字。


やった!思わず小さくガッツポーズ。

思わずベッドでスマホを胸に抱いてジタバタしちゃう。


あっくんの家と私の家は6駅離れてる。

二人の家を直線でつないだら、真ん中あたりに図書館。

お互い自転車で30分くらいの距離。


図書館が勉強会の場所だね。

毎週土・日とお休みの日には会える!


お母さんは私があっくんが好きなことを知っている。

だから可愛くなるためにお願いしたの。


服のバリエーションを増やしたり、

肩までの髪のヘアアレンジを覚えた。

お料理も頑張ってお弁当も作れるようになったんだよ。


受験勉強もやってるけど、

できることがいっぱい増えた。


あっくんに可愛いって、嬉しいって思ってもらって……。

そして彼女にしてもらうの。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る