第4話


 現在俺はD級の最下級冒険者だ。ランク別に用意されたテレポートを抜けた大平原には青やリンゴ色の弾力ある丸っこいモンスター、スライミー達が原生生物として立ちはだかっている。




 初心者達がこぞってそれらに飛び出して武器を振り回す。




 序盤も序盤。今俺達がやるべきミッションは【スライミーを10体討伐せよ】だ。コレが出来て昇格の為のポイント集めクエスト受注が可能になる。




 近づいてよく観察してみる。見た目は只の半透明なゼリーの塊だ、それに真ん中にコアと思しき青紫の球体が浮かんでいる。




 試しに刀身で一突きした。が、貫通はするもコアがぬるりと滑って刺さらなかった。




 何をと数度に渡って差し込むも青い粘々した液体で汚れるだけだった。




 「気持ち悪いな」  




 取り敢えず洒落臭いので蹴り飛ばしてストレスを発散する。表面は流動体では無いので多少湿る程度だ。スライミーはサッカーボールのように宙を跳ねた。




 開始から数分だがそろそろ真面目にするべきだろう。折角一目で買った東洋の刀が粘着で切れ味が悪くなってしまう。




 近場で水でもさが――






         メギョッ






 漫画的擬音で表すなら的確な衝撃だろう。意外と使われがちだが馬鹿に出来ない、傍から見て面白いだけなのだから。




 背中に耐え難いまるでボクサーのボディブロー級が炸裂する。当然頭が真っ白になり肺から空気が吹き出てしまう。




 草原に逆大の字に倒れ、混濁した意識が元に戻る頃には足腰が言う事を聞かず背中が悲鳴をあげた。




 久方ぶりに味わう打撃。現場作業でいけ好かない奴と殴り合いした時以来だろうか、しかしそんな物比ではないコレは命を掛けた職業なのだ。




 俺は現在、舐めていた冒険者という世界の洗礼を受けている最中なのである。




 歯を食いしばって振り返ると突撃したのは俺が蹴り飛ばしたのとは別のスライミーだった。




 ポケットからギルドカードのルーペのように透明プリントが着いた部分からスライミーを視察した。




 只の雑魚だと説明をよく読まず挑んだ結果を後悔すると共に最後には固有能力が書いてあった。




 【スライミーストライク】体液を圧縮し解放する事で体積の5倍の威力を発揮する事ができる。




 改めて自身の愚かさに気づき地面を這って逃れようとすると案の定舐めてかかった他の冒険者が犠牲になっていた。




 「うあああ....たっ、助けてくれ!誰か!脚をやられた!だれかぁあ゛っ!?」




 ゼリー玉の中に不透明色の固体が混じって近くで身体を圧縮している。




 咄嗟にカードで確認する。




 【ハードスライミー】ハードなムチムチとした弾力のスライミー。必殺技は通常種を遥かに凌駕する威力を誇る。




 刈り上げヘアに入れ墨を入れた若者だが彼の脚はハードスライミーのブチかましでひしゃげて骨が肉を突き破って飛び出て血溜まりを作っていた。




 他の冒険者をよく観察すればスライミーに苦戦するのが殆どだ。犠牲になり俺と同じように地面に張り倒された者達が多数存在した。




 対応出来たとしてもその強い衝撃に盾からでも吹き飛ばされかねず苦悶の表情を浮かべていた。




 彼を助けるべきか、いやそれどころじゃない。俺に不意打ちを仕掛けたスライミーももう次の渾身を食らわせんと準備を始めた。 




 (まずいっ!)




 跳ねた時草が舞い空気を切って考志の顔面目掛けて


伸縮したゼリーが鈍器となって迫りくる。




 彼は誰でもする当たり前の反応で咄嗟に眼前に刀を持って来た。しかし偶然か縦に持っていた為スライミーの身体が勝手にスライスされると体内のコアが割れ保っていた流動体が一気に崩れた。




 閉じていた目を開けスライムが死んだ事に助かったと一息つき、ギルドカードを見てみると1/10とカウントされていた。




 「あ、危なかった....助かったぁ〜」 




 そしてハードスライミーの方に意識を向けると、彼はもう手遅れだった。




 爆散したように頭蓋骨が割れ脳髄が一面に散らばっていた。




 人体の弾性で後頭部まで貫通出来なかったハードスライミーは組織と血液がへばりつき【クリムゾンスライミー】へと存在進化してしまっていた。




 満足したのか表情のうかがえないソイツはよりによって俺をターゲットに決めたようだ。




 「は?うそうそうそ、こっち来んなマジでやめろホントに!」




 軽く5m離れた距離でも殺人級の威力を持つ【クリムゾンショット】が身体を反らした考志の刀を芯からへし折った。




 10万もしたのにいとも容易く折ってくれたソイツは止まらぬ威力のままに向かい側の長身の女へ突撃し内蔵を破裂させた。




 「かはっ....」




 腹部へ重い一撃を受けたいかにも重装備な女剣士という佇まいの美女だったがその気狂い的物理によって大量の血液を吐き出した。




 「セルヴィア!なんて事を....」




 彼氏と思しきマッシュの男は激痛でのたうち回る彼女に回復薬をとポーションを取り出すも、既にターゲットにされていたソイツが顔面に....






        ボンッ




 


 馬鹿げた擬音だが確かにそう聞こえた。クリムゾンスライミーが男の顔面にめり込み眼球が飛び出て今度こそ後頭部が破裂して血飛沫をまき散らして噴水のように出るソレが晴天と相まって屈曲し虹を作った。




 顎だけになった元マッシュの男は自らの体液に溺れた声を出して膝をついて倒れた。

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