12 抑えが効かなくなるかもしれない。
あまみがぽつりと呟く。
「ねーねー、これって、怒られ案件だよねえ?」
その質問の意味を察して、私はやんわりと返事する。
「ま、まあ、“怒る人が確実にいるであろう案件”だね」
そう。この電力不足の時代に、7年前に約束した部内ルールを守るがために、無駄に電気を使ってる……。
これは、絶対に批判されそうな行為だ。
あまみは、まるで自分が悪いことをしているかのように、しょんぼりとする。
やがて、はっと思い出したように、言った。
「あ、でもさでもさ、その部長さんって、
【もし緊急時には、涼める場所として開放してほしい】とも言ってるそうだよ~!
だったら良くない!?? いいよねっ?
やっと見つけた、この涼しいオアシスが……
なくなっちゃったら甘味部的にも、困るんだよおおおお~~!!!」
本音全開のあまみの必死さに、思わずふっと笑いが出て。
それから、つい、こんな質問をしてしまった。
「ところで……。
あまみは、そのパソコン部の部長さんのこと、どう思う?」
あまみは、カクンと首をひねって。
しばらく考えたのち、こう言った。
「ん~。実はね、その部長さんの気持ちもわかるかも。
過去とか思い出、大事じゃない?
部室まるごと保存できたら……素敵かも」
……そっか。
あまみは、あくまで「思い出の保管」と考えてるみたいだ。
まるで亡くなった人の部屋を片づけられないみたいに、変えたくないみたいに、
部室の思い出をまるごと保管したい。
そう……かもね。
しかし、私はもうちょっと別の考えもあって。
「保留」そして「自制・抑制」だと感じてる。
ここに残されたデータを、個人で好きに利用すれば、
亡くなった女の子を、「再現」できてしまう。
写真を加工して、動画を加工して、行ってもいない場所に一緒に行った動画を作って。
声は合成して、ありもしない会話もさせて。でも会話内容にはリアリティを。
会話の癖は学習できるからね。
微笑んで。もう一度だけ、笑顔が見たい。声が聞きたい。
話したい。たわいもない話を。
ついでに……言ってくれなかったことを……言ってほしい。
どうせならついでに……ちょっと……別の服装も見てみたいかな。
――そんな欲求、どこまでも、
抑えが効かなくなるかもしれない。
だからこそ、この場に凍結してしまいたいのではないか。
手を引きたくて忘れたくて、でも手放すのも寂しくて決断が怖くて、
永遠に続く(仮)(仮)(仮)……の繰り返し。更新。
まるで全ての、時を超えた冷凍保存。
思い出の、暫定の、置き場所。
2026年から今に至るまで、
7年間続いてきた
判断と決断の先送り。
それがこの――凍結部だ。
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