第3話 この世界について
「この世界ーー『クフ大陸』と呼ばれるこの土地は、四つの柱によって支えられている。
我々はそれを『四神柱』ししんちゅうと呼ぶ。『龍神』『魔神』『女神』『人神』。
この四柱が世界の理を定め、均衡を保っている。」
ククオは目を丸くした。「四神柱…詳しく知りたいです。それぞれどんな神なんですか?」
ツネヨシは指を一つずつ折りながら説明を続けた。
「まず、龍神。
四神柱の頂点に立つ、最強の存在だ。天地を創造し、万物に命を与えたとされる古の神。
その力は計り知れず、空間を裂き、時間を操り、世界そのものを形作るという。
だが、龍神は決して表舞台には姿を現さない。人間の争いにも、魔王の復活にも、直接干渉しない。
ただ、世界が完全に滅びるような危機が訪れた時だけ、影から一瞬だけその意思を示すという。」
「その意志というのが『加護』だ。加護は神自身が選んだものにしか与えられない。それは祈りや努力で得られるものではなく、神の眼に留まるほどの運命や資質を持つものだけが予期せぬ瞬間に授かるものだ。
加護の効果は絶大で、それぞれの神によって違うが、受けた者は大陸を真っ二つにできるほどの魔力を操り、死さえ超越する力を得るとされている。だが、歴史上、龍神の加護を受けたものは二人だけだそうだ。
その一人ですら伝説の中の存在だ。神が選ぶ基準は謎に包まれていて、強者とも限らず、時には弱きものや異端者に与えられることもある…神の気まぐれってやつだ。」
ククオは息をのんだ。「最強なのに何もしない…?それって、なんか冷たい神様みたいですね。加護も、神が選ばないともらえないなんて……僕みたいなのじゃ無理か。」
ツネヨシは苦笑した。「冷たいというか『超越』しているのだ。人間の尺度では理解できん。」
「次に魔人。
魔力量では四神柱の中では最も多く、純粋な力の象徴だ。魔人は欲望や憎しみ、絶望を糧とし、それらを力に変える。
前の魔王ーー『無慈悲クルーエルのジンギ』は、魔神から直接加護を受け、常人の百倍を超える魔力を得たと言われている。魔神の加護を受けたものは、肉体が魔族化し、不死に近い再生力と破壊力を手に入れるが、代償として心が徐々に闇に染まり、最後には自我すら失う。」
ククオはゾッとした。「それ……怖いですね。魔王ってそんなにやばい加護をもらってるんですか…」
「そうだ。だからこそ、魔王は倒せないと思われていた。だが、四神柱は均衡を保つ存在だ。一方の力が強くなりすぎれば、他がそれを抑える。それがこの世界の理だ。」
ツネヨシは続けた。
「三番目は女神。
生命、癒し、調和の神。心の傷を癒し、自然の恵みを授ける。女神に加護を受けたものは『聖者』と呼ばれ、傷ついた者を瞬時に回復させたり、枯れた大地を緑に変える力を持つ。多くの神殿や教会が女神を信仰し、聖職者たちはその加護を求めて祈りをささげている。優しく、慈悲深い神だ。だが戦う力をほとんど持たない。守るための力、癒すための力…それが女神だ。」
ククオは少しほっとした表情になった。
「女神様いいひとそうですね……。なんか安心する。」
最後にツネヨシの声が少し低くなった。
「そして、人神。
四神柱の中で最も人間に近い神。弱さ、迷い、恐怖、絶望…それらをすべて『人間らしさ』として受け入れ、それを力に変える神だ。人神の加護を受けたものは、どんなに打ちのめされても立ち上がり、絶望の底から希望を見出す力を得る。それは派手な魔法でも、圧倒的な力でもない。ただ『それでも進む』という、純粋な意志の力だ。人神は決して強さを約束しない。だが、人間が人間であることを、最後まで手放せない。」
ククオはしばらく黙っていた。そしてぽつりとつぶやいた。「.....僕。弱いですよ。魔法もしょぼいし、さっきなんて死のうとした。そんな俺でも加護とかもらえたりするんですかね…」
ツネヨシは静かに微笑んだ。「神は気まぐれだ。どんな奴に加護を授かる可能性はある。」
ククオはテーブルに視線を落とした。胸の中で何かが小さく、だけど確かにともり始めた気がした。
この世界の理を知ったククオの異世界生活はまだ始まったばかりだったーー。
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