第2話 老魔法使い

王宮の中庭は嘲笑と怒号の渦に包まれている。ククオの地味な魔法ーー≪ウォーター・ボール≫がすべてを変えた。国王ジョビン三世の顔は怒りで真っ赤になり、魔術師団の面々は口々に非難を浴びせた。


「詐欺師め!」「予言を汚すな!」「追放しろ!」


ククオはただ俯いて、スマホをぎゅっと握りしめていた。


エルサニタは優雅に微笑みながら、ククオを横目で見下ろした。「どうやら。召喚の際に余計なものが混じってしまったようだな。私の力でこの世界を救うのは十分だ。」


彼の言葉に騎士たちが拍手喝采を送る。ククオは引きずられるように王宮の門まで連行された。荷物はすべて没収されてしまった。スマホは目の前で粉々に砕かれた。「待ってください!僕は異世界から召喚されたんだ!本物のはずだろ?もう一回チャンスをくれよ!」ククオの叫びは、門が閉まる音にかき消された。


門外は荒野に続く道だった。夕日が沈みかけ、冷たい風が吹き抜ける。ククオはぼんやりと歩き出した。


「はあ…終わった。魔法はしょぼいし、この世界について何も知らない。アニメみたいにチートスキルもないし…もう帰れないんだよな。家族もアニメも、もう会えないし見れないんだよな…」涙がにじむ。もうすぐ夜になる。夕暮れの空を眺め、呆然と歩いている。「生きてく意味あんのかよ…。ここで終わってもいいかな。」道端の崖を見つめ、ククオはゆっくり近づいた。大きなトカゲのようなものが谷の底で尾を引きずりながら歩いている。足を踏みはずせば、暗い谷底だ。「お母さん、ごめん。バイバイ。」目を閉じて飛び降りようとした瞬間ーー。


「待て」突然の声に、ククオの体は引き戻された。振り返るとそこにいたのは白髪の老人が杖を構えていた。傍らには獣のような耳を持つ少女が立っている。「だれですか?」ククオはよろめきながら尋ねた。


老人がため息をつく。「私はツネヨシ。森の老魔法使いだ。この子はわたしの娘、ニナ。通りすがりに君の気配を感じた。死ぬのはまだ早いんじゃないか。」ニナはククオの腕を支え、崖から引き離した。彼女の瞳は優しく、ククオの心を少し和らげた。


ツネヨシの住む森の小屋は、木々に囲まれた隠れ家だった。ククオは暖かいスープを渡され、ようやく落ち着いた。


「ありがとうございます…助けてくれて。僕、ククオといいます。実は、異世界から召喚されてきて…」


ククオはぽつぽつと話し始めた。召喚の儀式、王宮での失敗。スマホを砕かれた屈辱。


「スマホが…あれがなくなったら、もう何も思い出せない。家族の写真も、好きなアニメも、全部消えちゃった…もう生きる気力なくて………自殺しようとしたんです。馬鹿ですよね。」


ツネヨシは静かに聞き、頷いた。「『スマホ』か……聞いたことはある。記憶や知識をため込む不思議な道具だと。スマホのことはいい。君の魔法は本当にしょぼいのか?試してみろ。」


ククオは指を構え、詠唱した。「水よ、来い!≪ウォーター・ボール≫」


ぴゅっ。いつもの水鉄砲が飛び出す。ツネヨシは目を細めた。


「ほう……これは、水を操る基礎魔法だ。派手さはないが、潜在力は計り知れん。磨けば光る。」


ニナがククオの隣に座り、静かにスープのおかわりを差し出した。ククオは小さく頭を下げた。


「ありがとうございます。ニナさん…。僕何も持ってないけど…」ツネヨシが笑う。


「持ってないなら作れば良い。まずはこの世界について教えてやろう。」


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