第6話 重なる孤独と、涙の告白

ひめかとお風呂で身体をお互いに洗い合って、マットプレイを楽しんだ後

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シャワーで軽く互いの身体を流し終え、俺たちは新しいバスタオルを巻いたまま、真っ白なシーツが張られたベッドへ移動した。


ふわりと沈み込むマットレス。隣に座ったひめかの肩と、俺の肩が触れ合う。

その僅かな接点から、ひめかの体温がじんわりと伝わってくる。

それは、さっきまでの激しい行為の熱残りであり、同時に、彼女自身が持つ根源的な優しさのようにも感じられた。


ひめかはサイドテーブルから冷たいお茶のペットボトルを取り出し、少し震える手で蓋を開けて差し出してくれた。


「ふぅ……健二様、初めてなのに……とてもお上手で、凄かったですね♡」


「あはは……ごめん、ちょっと張り切りすぎちゃったかな」


俺は苦笑いしながら受け取った。


喉を潤しながら、視界の端に浮かぶ無慈悲な数字を確認する。

【呪い進行度:5%排出済み】

【残り時間:5時間23分……】


(素股での射精でも、わずかだが効果があったらしい。……でも、あと19回? 厳しいな)


5%じゃ全然足りない。100%にするには、このあとのプレイ時間だけじゃ、ひめかさん一人に頼り切るのは物理的に不可能だ。

他の中出しOKな嬢を探すしかないか。


俺の顔に、焦りと、諦めに似た暗い色が浮かんでしまったのだろう。

ひめかがハッとしたように俺の顔を覗き込んできた。

ナンバーワンたる所以は、容姿だけでなく、相手の心のさざ波を見逃さない、その卓越した感受性にあるのかもしれない。


「健二様……? どうかされましたか? もしかして、私のプレイに……何か至らない所がありましたか?」


彼女の声色が、甘えるようなトーンから、真剣に相手を案じるものへと変わる。


「なんでも遠慮せずにおっしゃってくださいね。ここは、健二様が癒やされるための場所ですから」


その真剣な眼差しに、俺は首を横に振った。


「いや、違うんだ。全然違う! 最高だったよ。 マジで、人生で一番気持ちよかった」


俺の言葉に嘘がないと分かると、ひめかはパッと花が咲くように表情を緩め、「よかったぁ……♡」と心底安堵したような息を漏らした。

そして、自然な動きで俺の肩にコトンと頭を預けてきた。

さらさらとした茶髪が、俺の首筋をくすぐる。

温かい。この温もりは、血生臭い異世界の戦場にはなかったものだ。

だが、その温もりが逆に、俺の胸をきゅっと締めつけた。


この優しさを前にして、俺は自分の抱える絶望を隠し通せるだろうか。


俺は、独り言のようにぽつりと漏らした。


「……実はさ」


呪いのことは言えない。

『魔王の呪いでちんこが爆発するから、何が何でも中出しさせてくれ』なんて言っても、頭のおかしい人だと思われて通報されるのがオチだ。

だから、俺は現状を「死に至る病」という形に翻訳し、嘘の中に本当の「痛み」だけを混ぜて伝えることにした。


「俺、社会人になってから、10年近く、まともな休みなんてあまりなくて。

……毎日終電までサビ残。家に帰っても泥のように寝るだけで、起きたらまた仕事。本当に、働き蟻だったんだ」


俺は目線を落とし、タオルの端を強く握りしめた。

異世界での10年間の奴隷のような日々。孤独と恐怖。それが脳裏をよぎる。


「最近、その職場をようやく辞めたんだ。これでやっと、自分の人生を生きられるって思った矢先に……病気が発覚して」


少しだけ声が震えた。

これは演技じゃない。一人の勇者が背負った、日本滅亡のカウントダウンへの恐怖と、理不尽な運命への嘆きだ。


「明日、死ぬかもしれないって言われた。現代医療ではもう、治療できないみたいで」


肩を預けていたひめかの身体が、びくりと強張った。

彼女はゆっくりと顔を上げ、俺を見つめた。

そのヘーゼル色の瞳が、驚きと、そして深い悲しみで揺れている。


「せっかくこれから、普通にご飯食べたり、旅行したり、誰かと笑ったり……そういうの、全部これからだって思ったのに……」


俺は俯いて、小さく笑った。乾いた、自嘲の笑い。


「頑張って、頑張って、馬鹿みたいに歯を食いしばって生きてきて……最後のご褒美がこれかよって。……笑っちゃうよね」


「……笑えませんよ」


震える声がした。

見ると、ひめかの大きな瞳から、大粒の涙が溢れ出していた。


「……そんなの、ひどすぎます……。そんなの、あんまりですよ……」


彼女の瞳から零れ落ちた雫が、俺の手の甲にぽたりと落ちた。


温かく、生々しい、他人の涙の熱さ。

俺は、その熱さに、どうしようもなく胸を打たれた。嘘を吐いている罪悪感と、彼女の純粋な同情心に対する感謝が混ざり合い、喉が詰まる。


「……私、健二様と……妹のこと、重ねちゃいました」


彼女は震える声で、涙をこらえようと唇を噛みながら続けた。


「みんなには内緒にしてるんですけど……私の妹が、難病でずっと入院してるんです。治療費がすごくかかって……だから、私、ここで稼がなきゃいけなくて……」


俺は息を呑んだ。

スキルがなくたって分かる。ひめかが嘘偽りなく、この重大な秘密を打ち明けてくれていることが、言葉の重さから痛いほど伝わってきた。


「妹はお姉ちゃん子で……以前は本当に甘えん坊で、可愛くて。でも病気が発覚してからは、ずっと入院してて……私もお金のことばっかりで……。

妹のためにって思って頑張ってきたけど……妹は、私が苦しんでるの分かってて……

『病気になってごめんね。私がいなければお姉ちゃんも楽になれるのに』って言うんです……」


ひめかの美しい顔が、苦渋に歪む。


「まだ14歳なのに、自分の命を諦めてる顔をするんです。

私がいくら『生きて』って言っても、妹は自分が私の重荷になってるって思い込んでて……。

このままじゃ、全部ダメになっちゃうって……毎日思ってて……どうしたらいいか分からなくて……」


言葉にならなくなったのか、彼女は

「うぅっ……」と嗚咽を漏らし、俺の胸に顔を埋めた。

誰にも相談できる相手がいなかったのだろう。


「歌舞伎町No.1」という華やかな仮面の下で、彼女はたった一人で、重すぎる現実と戦い続けていたのだ。

俺の語った理不尽な運命が、彼女の張り詰めていた糸を切ってしまったのかもしれない。


少女のように泣きじゃくるひめかを抱きしめながら、俺は思った。

俺も日本滅亡(ちん◯ばくはつ)の危機という極限状況だが、この子に何か協力してやりたい。

いや、協力しなければならない。


自分の内面で抱えている弱みを、嘘と真実を交えながらも、お互いに見せ合った。

そしてそれが、どちらも「死」と「大切な人の命」に関わる、似たような深い悩みだった。


孤独だった二つの魂が、この狭い個室で共鳴し、一気に精神的な距離が近づくのを感じた。

これがたとえ、俺に同情させて金を搾り取るための営業トークだったとしても、ひめかになら「それでも良い」と自然と思えていた。

それくらい、俺の胸で泣く彼女の体温は真実だった。


俺は、ひめかの震える背中を優しく撫でながら、覚悟を決めた。

自分の持つ『回復魔法』のことを話そう。

もちろん、「魔法」なんて言っても信じてもらえないだろう。

だから、別の言い方で。

彼女の希望となり得る、俺だけの「力」のことを。


俺は、ひめかが泣き止むのを、静かに待ち続けた。

ただのソープ嬢と客という関係は、もうここにはなかった。

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異世界で魔王を倒したら ち◯こに時限爆弾つけられたんだが〜献身ギャルから幸薄人妻まで、彼女たちの絶望を愛で塗り替える現代勇者の無双録〜 大気圏 @yositomo222

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