第16話:限界の先のエネルギー、そして愛のフルコンボ・パルクール
(――ッドォォォォォォォォォォンッ!!!!!)
「……か、かおり……。俺はもう、一歩も……指一本……動かせん……」
深夜の加藤家。無料キャンペーンの激務を終えた二人は、玄関に倒れ込むように帰宅した。
世界王者といえど、全人類を相手にした「お座り」と「デレ」の連続は、パルクールでビル十棟を飛び越えるより過酷だったのだ。
リビングのソファに沈み込み、文字通り「灰」になっている翔。
(翔の脳内・強制終了:……すまん……かおり……。今夜は、お前を抱きしめる腕の筋肉すら……ストライキを起こして……。俺の理性が、眠りという名の……着地を……)
だが、その時。
隣に座ったかおりが、翔の肩にそっと寄り添い、彼の頬に『チュッ』と柔らかな音を立てて触れた。
「……え?」
翔が目を見開くと、そこには顔を林檎のように赤くしたかおりが、上目遣いで彼を見つめていた。
「……最近、ずっと忙しくて。翔さんと二人っきりの時間……少なかったから。……寂しかったんだよ?」
(――ッドォォォォォォォォォォォォォォォォンッ!!!!!)
(翔の脳内・全システム再起動&オーバーロード:……ぐ、あ、あああァァァッ!!!!!
か、かおりィィィィィィィィィィィィッ!!!!!
い、今……『寂しかった』と言ったかッ!? その破壊力、ダイナマイト100万トン級だッ!! 俺の全細胞が、全筋肉が、核融合(ビルドアップ)を始めたぞォォォッ!!! 限界!? 疲れ!? そんなものは銀河の彼方へパルクールで放り投げたわッ!!!)
「かおりィィィッ!! 大好きだァァァッ!!!」
「わわっ!? 翔さん、動けないんじゃ……きゃあっ!?」
翔はソファを蹴って飛び起きると、驚くかおりを軽々と、お姫様抱っこで抱え上げた。
その動きには一切の淀みがない。むしろ、世界大会決勝よりも速い。
「行くぞかおりッ!! 俺たちのプライベート・パルクール(夜の部)の始まりだァァァッ!!」
廊下の壁を蹴り、反動を利用して最短距離で寝室へ。まさに愛による最短ルートの開拓ッ!!
「ちょ、ちょっと翔さん! お風呂はー!? 先に入らないと!」
「そんなもん、後だァァァッ!! 今の俺には、かおりという名の栄養補給(プロテイン)が最優先なんだよォォォッ!!!」
バタンッ!! と勢いよく閉まる寝室のドア。
加藤家の夜は、王者の愛のエネルギーが爆発し、最高の「着地」へと向かって加速していくのだった。
(リトル翔の実況:ッドォォォォォォォォォォンッ!!!!! 見たかッ! 疲労困憊の身体を、妻のキス一つで『神速の猛獣』へとリビルドしたこの奇跡をォォォッ!! お風呂を後回しにするという、王者の背徳的パルクール!! かおりちゃん、今夜の翔さんはもう誰にも止められねえぜェェェッ!!! 幸せになれよォォォォッ!!!))
愛の着地は、君の腕の中。 壱花 @mon-9921
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