第14話:王者の意地と、大盤振る舞いの暴走(ビルドアップ)
(――ッドォォォォォォォォォォンッ!!!!!)
「……フン、デレてばかりだと思われては困るな。世界王者の真の姿を、その目に焼き付けておくがいいッ!!」
「雑誌のまんま」と言われ続けた翔が、ついに立ち上がった。
集まった新規会員たちの前で、彼は鋭い眼光を放ち、プロテインドリンクを置く。その背中は、まさに獲物を狙う孤高の猛獣。
(翔の脳内・威厳奪還作戦:……見ていろ、かおり!! そして新規会員どもッ!! これが世界を震え上がらせた、加藤翔の『哲学』だッ!! 今この瞬間の俺は、鉄の心を持つ冷徹なアスリート……ッ!!)
タンッ!!
翔の体が弾丸のように射出された。
三メートルを超える壁を垂直に駆け上がり、鉄骨から鉄骨へ、まるで重力が存在しないかのように飛び移る。空中での三回転捻り(トリプルコーク)から、針の穴を通すような正確さで、一点の揺るぎもなく着地。
「……ッ!!」
静寂。
あまりの神速、あまりの神々しさに、ジム内が静まり返る。これぞ世界王者。誰もがその「威厳」に圧倒された。
だが、その沈黙を破ったのは、誰であろうかおりの弾んだ声だった。
「わあぁぁ!! 翔さん、すごーーいっ!! 今の、今までで一番カッコよかったよぉ!!」
パチパチパチパチッ!! と、かおりが目をキラキラさせて、全力で拍手をする。
(翔の脳内・威厳、音速で蒸発:……ぐ、あ、あああァァァッ!!!!!
か、かおりィィィィィィィィィィィィッ!!!!!
い、今、『一番カッコいい』と言ったかッ!? そのキラキラした瞳で俺を見たかッ!! 幸せだッ!! 幸せすぎて、心臓がバクフリップしてるぞォォォッ!!!
ああ、もうどうでもいいッ!! 威厳なんてゴミ箱行きだッ!! かおりをこんなに笑顔にさせてくれたこの状況、すべてに感謝したいッ!! 感謝のビルドアップだァァァッ!!!)
翔は着地した姿勢のまま、顔面を真っ赤にして、天を仰いで叫んだ。
「……決めたッ!! 今日集まった全員、入会金はタダだァァァッ!! いや、初月の月謝も無料にしてやるゥゥゥッ!! 喜べッ!! 全員まとめて、かおりの笑顔の糧にしてやるぞォォォッ!!!」
「「「「「うおおおおおぉぉぉぉっ!?!?(本当にチョロすぎる……!!)」」」」」
佐々木さん:「……おい、田中さん。誰かあの経営破綻パルクーラーを止めろ」
田中さん:「はっはっは。かおりさんの拍手一つで、ジムの予算がパルクールで飛んでいきましたな」
かおりだけが、「えへへ、翔さん太っ腹〜!」と無邪気に喜んでいた。
(リトル翔の実況:ッドォォォォォォォォォォンッ!!!!! 見たかッ! 完璧な着地(ランディング)からの、経営者として最悪の墜落(フォール)をォォォッ!! かおりちゃんの拍手という名の最高級プロテインが脳に回りすぎて、もはや数字の計算すらパルクールでどっか行っちまったぜェェェッ!!! 翔さん、アンタ明日から水だけで生活する気かァァァッ!!!))
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