第12話:リビングの独演会と、熱狂の画像解説(コメンタリー)

(――ッドォォォォォォォォォォンッ!!!!!)


「さあ、かおり!! ついにこの時が来たッ! 編集部から奪取……いや、拝領した至宝を開封(ビルドアップ)するぞォォォッ!!」


帰宅するなり、翔はリビングの60インチ大画面テレビにUSBを接続した。


そこには、誌面には載らなかったかおりの未公開カットが、4K画質の圧倒的な美しさで映し出されている。


(翔の脳内・全細胞がスタンディングオベーション:……ぐ、あ、あああァァァッ!!!!!

か、かおりィィィィィィィィィィィィッ!!!!!

なんだこの破壊力はッ!! 撮影の合間にふと見せた、この少し眠たげな横顔ッ!! そして太陽の光が髪を透かすこの1ピクセルッ!! すべてが神の計算を超えた美のパルクールだァァァッ!!!)


「見てくれ、かおり!! この3枚目のカットだ!! 少し右に首を傾げることで、うなじのラインが黄金比を描いている!! パルクールで言えば、一切の無駄を削ぎ落とした完璧な着地体勢(ランディング)に等しいッ!!」 

「も、もうっ、翔さん! 恥ずかしいよ! 画面が大きすぎるよぉ!」


顔を真っ赤にして、クッションで顔を隠すかおり。だが、王者の独演会は止まらない。


「恥ずかしがっている場合ではないッ!! 次の5枚目を見ろ!! コーヒーカップを持つ指先の角度……これは重力を利用したホールドの極みだッ!! この指先に、俺の理性という名の障害物はすべてなぎ倒されたッ!! ああ、美しい……!! かおり、お前は存在そのものが、全人類を魅了する究極のコース(障害物)なんだッ!!」


「……翔さん、パルクールの解説より熱くなってない……?」


赤面しながら呆れるかおりを尻目に、翔の解説はさらにヒートアップしていく。


一枚のオフショットに対し、筋肉の緊張、光の反射、そして「いかに俺の心が震えたか」をパルクールの専門用語を交えて熱弁すること三時間。


その夜、加藤家のリビングには、妻への愛をビルドアップしすぎてオーバーヒートした世界王者の、幸せそうな絶叫がいつまでも響き渡るのだった。


(リトル翔の実況:ッドォォォォォォォォォォンッ!!!!! 見たかッ! 世界一のパルクール理論を、すべて『嫁の鑑賞』に全振りするこの潔さをォォォッ!! 黄金比だの重力だの、理屈をこねくり回しながら結局言いたいのは『かおりちゃん可愛い』の一点のみッ!! 翔さん、アンタの愛の独演会、もはや銀河系の限界値を突破して異次元に着地してるぜェェェッ!!!))

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る