第11話:王者の買収と、禁断のオフショット

(――ッドォォォォォォォォォォンッ!!!!!)


「お待たせしました! ついに見本誌が完成しましたよ!」


ジム『LUMINA』に、編集社のスタッフが誇らしげにやってきた。テーブルに置かれた最新号。

そこには、第10話のあの「奇跡のデレ」が、最高の紙質で印刷されていた。


(翔の脳内・パニック再燃:……ぐ、あ、あああァァァッ!!!!!

か、かおりィィィィィィィィィィィィッ!!!!!

な、なんだこの写真はッ!? 頬を触られて、猫のように目を細めてデレデレになっているこの情けない男は本当に俺かッ!? その隣で、すべてを包み込むような聖母の微笑みを浮かべるかおり……!! 美しすぎるッ! だが、この俺のデレ顔が全国に晒されるのは、パルクール王者として死を意味するッ!!)


「……こ、断るッ!! この雑誌の販売は中止だッ!! 俺の威厳が死滅するだけでなく、かおりのこの聖母のような尊さが、不届きな輩の目に触れるのは耐えられんッ!! 全在庫、俺が買い占めてジムの地下に封印してやるゥゥッ!!」


翔が必死の形相で叫ぶ。背後では佐々木さんと田中さんが、雑誌を覗き込みながらクスクスと肩を揺らしている。


「……いやぁ、いい猫っぷりだ。これ、LUMINAのポスターにしたいね」と佐々木さん

「はっはっは、猛獣が完全に家猫になりましたなぁ。実に微笑ましい」と田中さん

翔が販売阻止のために今まさに飛びかかろうとした、その時。


「あ、加藤さん。こちら、『誌面には載せきれなかったオフショットの全データ』です。かおりさんの単独未公開カットもたくさん入ってますよ?」


スタッフが差し出した一枚のUSBメモリ。


(……ピタッ。)


翔の動きが、空中で静止した。


(翔の脳内・超高速計算:……な、なにィ!? オフショット……だと!? 誌面に載っていない、俺だけが見るべきかおりの未公開カットが、その小さな棒の中にビルドアップ(凝縮)されているというのかッ!? ……う、うおおおッ!! 欲しいッ!! 喉からパルクールして手が出るほど欲しいッ!!)


「……ふ、ふん。編集社さんの熱意には負けた。そこまで言うなら、販売を許可してやらないこともない。……ただし、そのデータは今すぐ、厳重に俺が管理(独占)するッ!!」


翔は震える手でUSBを受け取ると、宝物のように胸に抱いた。


その隣では、かおりが嬉しそうに雑誌のページをめくっている。


「わあ、この写真の翔さん、本当に幸せそうな顔してるね。私、これ大好き!」


(――ドォォォォォォォォォォォンッ!!!!!)


(翔の脳内・大爆発:……か、かおりィィィィィィッ!! お前が幸せなら、俺の威厳なんてプロテインの粉末よりも軽く吹き飛んでいくわッ!! 売れッ! 全世界で売れェェェッ!! 俺たちが世界一幸せな夫婦だと、全宇宙に知らしめてやるぜェェェッ!!!)


USBを握りしめ、歓喜の涙を流す翔。


LUMINAの日常は、今日もトップブリーダーの手のひらの上で、美しく着地(ビルドアップ)していた。


(リトル翔の実況:ッドォォォォォォォォォォンッ!!!!! 見たかッ! 鉄の意志を持つ王者が、『オフショット』という餌(エサ)に釣られて秒速で買収される歴史的瞬間をォォォッ!! 威厳よりも独占欲、独占欲よりもかおりちゃんの笑顔ッ!! これぞ加藤翔の揺るぎないビルドアップ・ピラミッドだぁぁぁッ!!! 次回、USBの中身を見て鼻血でパルクール不能になる翔さんの姿が見えるぜェェェッ!!!))

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