第8話:狙われた女神と、最強のトップブリーダー
(――ッドォォォォォォォォォォンッ!!!!!)
雑誌発売から数日。ジム『LUMINA』のカフェカウンターには、見慣れない男たちが群がっていた。
原因は、最新号の特集だ。そこに写る、天使のような微笑みを浮かべるかおりを目当てに、「聖地巡礼」という名の不届き者が続出していたのだ。
そこへ、一人の男がさらに踏み込んだ。
「店長さん、実は僕、芸能事務所の者で……。この前の雑誌を見て、ぜひ一度モデルとして――」
「(……ッ!!)」
その瞬間、スタッフルームから翔が「飛んできた」。
壁を蹴り、客席のテーブルを1センチの誤差もなく飛び越える超高速のパルクール。男の目の前に着地した翔は、凄まじい威圧感と共に立ちはだかった。
「……悪いが、この店長は『加藤翔・専用』だ。不届きなスカウトなら、今すぐ俺のパルクールで成層圏まで蹴り飛ばしてやる……ッ!!」
翔の眼光は、まさに獲物を仕留める直前の猛獣。スカウトマンは腰を抜かして後ずさりし、店内の空気が恐怖で凍りつく。
(翔の脳内・独占欲MAX:……フン、これでおののいて退散するだろう。かおりを狙う不届きな輩には、この『死の宣告』こそが最高の薬だッ!!)
だが、その猛獣の咆哮を、一瞬で溶かす鈴のような声が響いた。
「もうっ、翔さん! そんな怖い顔しないの!!」
(……ビクッ!!!)
かおりが、翔の腰に両手を当てて、ぷくーっと頬を膨らませて一喝した。
「……ッ!? か、かおり……?」
「お仕事の話を聞きに来てくれた人に、そんなパルクールで威嚇しちゃダメ! メッ、だよ!」
(翔の脳内・理性がホワイトアウト:……ぐ、あ、あああァァァッ!!!!!
か、かおりィィィィィィィィィィィィッ!!!!!
い、今……『メッ』と言ったかッ!? 世界を制したこの俺に『メッ』と言ったのかァァァッ!! ……たまらんッ!! その叱り顔、100点満点だッ!! 叱られたいッ!! もっとその可愛い顔で俺を支配してくれェェェッ!!!)
さっきまでの「猛獣」はどこへやら。
翔は一瞬で肩の力を抜き、かおりの前に跪くような勢いで「お座り」状態になった。
「……すまん、かおり。俺が悪かった。怖がらせるつもりはなかったんだ。だから、そんな怒らないでくれ……」
先ほどまでスカウトマンを射殺さんばかりだった眼光は、いまや潤んだ瞳で主人を見上げる「ゴールデンレトリバー」そのもの。
そのあまりに鮮やかな変貌ぶりに、唖然としていたスカウトマン、そして佐々木さんと田中さんが声を揃えた。
佐々木さん・田中さん・スカウトマン:「「「「「さすが、トップブリーダー……」」」」」
かおりは「もう、わかればよろしい!」と満足げに翔の頭を優しく撫でる。
世界最強の男が、最愛の妻に完全に飼い慣らされている。それこそが、LUMINAという名の檻(愛の巣)の真実だった。
(リトル翔の実況:ッドォォォォォォォォォォンッ!!!!! 見たかッ! 猛獣を秒速で大型犬に変える魔法の言葉、『メッ』の威力をォォォッ!! 物理法則を無視したパルクールも、かおりちゃんの指先一つのビルドアップには勝てねえッ!! 完敗だ、翔さん!! アンタもう一生、そのドッグランから出られねえぜェェェッ!!!))
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