第7話:王者の威厳(物理)と、妻の「好き」という名の衝撃波
(――ッドォォォォォォォォォォンッ!!!!!)
「……お、終わった。俺の……俺の『百獣の王』としてのブランドが、音を立てて崩れていく……ッ!!」
ジム『LUMINA』のスタッフルーム。雑誌の発売日当日、翔はテーブルに広げられた最新号のスポーツ誌を前に、頭を抱えて絶望していた。
誌面のメインを飾るのは、確かに第6話で見せた「重力を超越した奇跡の跳躍」だ。
そこには、神々しいまでの世界王者の姿があった。……しかし、その次のページ。
そこには、休憩中にかおりに突っ込んでいき、相好を崩してデレデレになっている、紛れもない「大型犬」状態の翔がいた。さらに、その隣には、彼を優しく見つめて天使のように微笑むかおりの姿が、見開きいっぱいに掲載されていたのだ。
(翔の脳内・絶叫パニック:……ぐ、あ、あああァァァッ!!!!!
か、かおりィィィィィィィィィィィィッ!!!!!
俺の『肉体による哲学』を語るクールなイメージが、この一枚のデレ写真で完全にビルドアップ失敗(崩壊)だァァァッ!! しかも何だこのかおりの可愛さはッ!! 天使かッ! 国宝かッ!! 全人類がお前のこの微笑みに恋をしてしまったら、俺はどうやって全人類をパルクールで蹴散らせばいいんだァァァッ!!!)
「俺の威厳がぁぁ……ッ!! それに、かおりの可愛さが世界に知られてしまったぁぁぁ!!」
悶絶する翔の背後で、常連の佐々木さんと田中さんが、雑誌を回し読みしながら楽しげに笑っている。
「いやぁ、いい写真じゃないか加藤さん。この『飼い主を見つけたゴールデンレトリバー』みたいな顔、最高だよ」と佐々木さん。
「かおりさんの笑顔も素晴らしい。これはLUMINAの入会希望者が殺到しますな」と田中さんが追い打ちをかける。
そこに、カウンターから雑誌を覗き込んだかおりが、くすりと笑って翔の肩に手を置いた。
「ふふ、私はこの写真の翔さん、好きだけどね」
(――ドォォォォォォォォォォンッ!!!!!)
翔の脳内に、核爆弾級の衝撃波が走り抜けた。
(翔の脳内・昇天:……な、ななななッ……!!
『好き』……だとォォォォォォッ!?!?
お前は今、この大型犬のような俺を『好き』と言ったのかァァァッ!! 威厳!? そんなもの、今すぐ窓から放り投げてやるッ!! お前が好きなら、俺は一生、お前専用の大型犬としてパルクールし続けてやるぞォォォッ!!!)
「か、かおりィィィィィィィ!!!」
翔は一瞬で立ち直り、再び大型犬となってかおりを背後から包囲(ハグ)した。
佐々木さん:「……いつものことです」
田中さん:「……ですね。雑誌の威厳より、奥さんの一言。これが王者のビルドアップですな」
(リトル翔の実況:ッドォォォォォォォォォォンッ!!!!! 見たかッ! 世界王者の威厳が、かおりちゃんの『好き』という名の指先一つで、塵となって消え去った瞬間をォォォッ!! 雑誌の表紙を飾るカリスマ性が、たった一言の『バフ』によって完全敗北ッ!! これが加藤夫妻の力関係、これがLUMINAの真のヒエラルキーだぁぁぁッ!!! 次号の特集は『大型犬・翔の飼い方』で決まりだぜェェェッ!!!))
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます