第6話:王者の本領と、女神の視線が起こす奇跡
写真撮影が再開される。カメラの前で、翔の顔から「大型犬」の面影が消え、王者の集中力が宿る。
タンッ!!
低い踏み切りから、翔の体が重力を無視して宙に舞った。垂直の壁を水平な地面のように駆け上がり、鉄骨を掴んで一回転。あまりのスピードに、カメラマンも取材陣も息を呑む。
「……いや、やっぱり、加藤さんは凄いな……」と佐々木さん。
「……ああ。普段あんなだけど、動くとやっぱ世界王者だ」と田中さん。
(翔の脳内・高揚感:……どうだッ!! これが、本物の王者だ!! プロテイン一万リットル分は伊達ではないッ!!)
次の跳躍に移ろうとしたその時。カフェのカウンターから、かおりがそっと顔を覗かせた。
「(翔さん、すごいね……!)」
彼女のキラキラとした瞳が、翔の動きを追いかける。その視線が、不意に、翔と真っ直ぐに絡み合った。
(翔の脳内・限界突破:……ぐ、あ、あああァァァッ!!!!!
か、かおりィィィィィィィィィィィィッ!!!!!
見たなッ!? 俺のこの完璧なパフォーマンスをッ!! お前のその視線が、俺を限界までビルドアップさせるッ!! 今、この瞬間の俺は、どんな壁でも、お前のために跳んでみせるぞォォォッ!!!)
翔は、今まで以上に高く、そして速く跳んだ。本来ありえない角度から壁を駆け上がり、鉄骨の隙間を水のようにすり抜ける。
かおりの視線が翼を与えたかのように、その動きは重力を完全に超越していた。
カメラマンはシャッターを切るのも忘れ、呆然とその「奇跡」を見つめていた。
「……あれ、やっぱ『かおりさん、見ててくれ!』っていう愛のビルドアップなんだな……」
「……だね。あれはもう、俺たちの知ってるパルクールじゃない。愛の飛行術だよ」
佐々木さんと田中さんの言葉に、取材陣もただ頷くしかない。
世界最強の男が、最愛の妻の視線ひとつで限界を超えていく。それは、LUMINAの面々にとって、最も誇らしく、そして最も呆れるほど甘い光景だった。
(リトル翔の実況:ッドォォォォォォォォォォンッ!!!!! 出たぁぁぁ! 物理法則をパルクールで飛び越える『愛の限界突破(オーバードライブ)』だぁぁ!! かおりちゃんの視線という名の最高級プロテインを脳内に直接ブチ込んで、重力すら置き去りにした奇跡の跳躍ッ!! 佐々木さんも田中さんも、もう詩人になるしかねえほどの神々しさだぜェェェッ!!!))
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