第4話:朝のカフェ仕込みと、眠気眼の女神へのカウンター

開店前の『CAFE LUMINA』。

まだ薄暗い店内に、コーヒー豆を挽く芳醇な香りが立ち込めている。

かおりは寝癖を一つ、ぴょこんと跳ねさせたまま、まだ覚醒していないのか、トロンとした瞳でカウンターに立っていた。


彼女が手に持とうとした重い業務用ミルクのパックを、翔が音もなく、背後から伸ばした腕で奪い取る。


「……っ、あ。翔さん。……お湯、もう沸かしてくれたの?」

「……フン。これくらいパルクールのウォーミングアップにもならん」


(翔の脳内・逆襲のビルドアップ:……甘いッ!! かおり、お前は今、あまりにも無防備だッ!!

その寝癖、潤んだ瞳……昨夜の『お預け』で溜まりに溜まった俺のフラストレーションを、今ここでカウンター(反撃)としてブチ込まなくて何が王者かッ!!))


翔はそのまま、かおりを背後から包み込むようにして作業を代わる。

昨夜、丹念にケアしたさらさらな髪から、ふわりと自分の選んだヘアオイルの香りが立ち上る。


「……翔さん、今日なんだか……距離、近くない?」

「気のせいだ。……ほら、そこにいろ。危ないからな」


(翔の脳内・限界突破:……ぐ、あ、あああァァァッ!!!!!

か、かおりィィィィィィィィィィィィッ!!!!!

近い! 自分から仕掛けておいて、あまりの近さに俺の心臓がバックフリップを決めたぞッ!! このまま耳元で囁けば、お前のその眠気も一瞬でビルドアップして消し飛ぶだろうに……ッ!!))


「……ん、翔さん、あったかい……」


だが、かおりは驚くどころか、くるりと向き直ると、翔の分厚く鍛え上げられた胸板に、無防備にコテリと顔を埋めてきた。

まだ覚醒しきっていない彼女の柔らかい体温が、翔の胸筋を通してダイレクトに心臓へ突き刺さる。


(翔の脳内・理性が場外へ消失:な、な、な……ッ!!

カウンターを仕掛けたのは俺のはずなのに、なぜお前はそうやって正面から、俺の最も無防備な場所に飛び込んでくるんだッ!!

これでは反撃どころか、俺が一方的にノックアウト(完敗)ではないかぁぁぁッ!!!))


「……っ。……おい、かおり。そんなところで寝るな。……店が開くぞ」

「……えへへ、あと5分。翔さん、大好き……」

「………………ッ!!!」


(翔の脳内・魂の絶叫:か、かおりィィィィィィィィィィィィッ!!!!!(二回目)

今! 今『大好き』って言ったな!? 胸板越しにその吐息を感じさせながら言うのは、俺の心にクリティカル・ランディングしたぞッ!!

もういい、開店準備は俺がすべて完遂してやる! お前はそこで、俺の愛という名の重力に身を任せていろォォォッ!!!))


数十分後。

開店準備を完璧に終え、鼻歌まじりにコーヒーを淹れるかおりと、その横で茹でダコのように顔を赤くして、無心にバーベルを上げるが如くコーヒーカップを磨く翔の姿があった。


会員A:「(……おい。今朝の翔さん、いつにも増して目がバキバキじゃねえか?)」

会員B:「(ああ……今朝も『かおり成分』を胸板から直接吸収して、脳内パルクールが制御不能なんだろうな……)」


リトル翔:……ッドォォォォォォォォォォンッ!!!!! 第4話、ランディング成功ォォォ!!

見たかッ! 胸板へのコテリ!! 翔さんの大胸筋が、かおりちゃんの可愛さでビルドアップを通り越して爆発寸前だぜぇぇ!! 「おはよう」をカットしたことで、朝の静寂の中に二人の鼓動だけが響くような、最高の緊張感が生まれたッ!! !

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