第5話 ポチッとコーギー

 

 おまわり悪魔犬はショックを受けた顔をして、あからさまに不服そうな表情に変わった。


「イヤわん! きさ……貴様さまは、絶対こきつかうタイプだワン!」


「じゃあ、今すぐ消えるわん?」

「うぅ〜……」

 私の笑顔の圧にそれ以上の抗議をためらったのか、コーギーはうつむき、しょんぼりした表情で答えた。


「……オイラは、今から貴様さまのしもべだわん」


「よろしい」


 すぐに逃げ出すかもしれないけど、その時は捕まえればいいだろう。

 今回みたいにズルをして寿命を集める方法を他にも知っているかもしれないし、もしも仲間がいればそっちを捕まえることもできる。

 飼い犬に手を噛まれないようにだけ注意すれば大丈夫なはずだ。


「で、あなたの名前は?」

「別にないわん」


「それじゃあ呼ぶのに不便だから、私が名前を付けてあげる」


 犬……おまわり……ポリス……かわいいのが良いな。そうだ。

  

「ポッチー。今日からあなたはポッチーよ」


「貴様さまは何とお呼びすれば良いわん?」


「私の名前はカエデだけど、ご主人さまでも良いわよ」


「はいわん。デカエさま」

「もうお別れなのね。さみしいな」

「かしこまりわん。ご主人さま」


 ポッチーは私の方をまっすぐ向いて、ぴしっと敬礼した。くそ、かわゆいな。話がまとまったので、ゆっくりと下降する。地面に降りた私は背中の羽を隠した。


「じゃあさっそくだけど、次の不届き者を探しに行くから付いてきなさいポッチー」


「がってんしょうちのワン!」


 ゆっくり着地した後、指を鳴らし、時間を止めていた悪魔の結界を解除する。私にとっては簡単なことだ。

 一瞬視界がブレた後に目に映った現実世界は、日常の色を取り戻していた。


「さっ行くわよポッチー……って、えぇっ!」


 ポッチーがいない。足元には警察の帽子が落ちているだけだ。急いで周りを見ると、犬のフリをして一生懸命走って逃げるポッチーがいた。表通りに出て、人混みにまぎれるつもりだ。

 でも背中に羽があった部分の毛が黒いからすぐに分かる。


「ふっふっふ。逃がさないわよぉ」


 ひとりで仕事をするのも嫌になってきたところで偶然見つけたワンチャンス。

 絶対捕まえて、可愛がってやるんだから。

 

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ポチッとコーギー 橘 静樹 @s-tachibana

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