第4話 抗議のコーギー

 

「わんわん、わわーん」


 急に鳴き始めた。


「え、うそでしょ。困ってしまってわんわんじゃないのよ。今の状況でホントはただの犬でした、なんて誤魔化すのはさすがに無理でしょ」


 おまわり悪魔犬はまだ犬になりきるつもりなのか、おすわりの姿勢になった。


「くぅ〜ん」

「いや、可愛い……くないし」


「うぅ〜……悪魔でもシラを切るわんっ」

「知らないわよ」

「あくまでも、は笑うところわん」

「笑わないわよ」

「くぅ〜ん」


 おすわり悪魔犬がまっすぐにこちらを見てくる。目ヂカラが、やばい。

 ずっと我慢しているのだが、本当は今すぐにでも両手で顔を撫で回したいと思っている。実は私、イヌ派なのだ。


「一回、一回だけチャンスが欲しいワン! もうズルしないから、見逃して欲しいワン!」


「うーん、どうしようかな」


 まぁ、反省の意思はあるようだ。処分するのは簡単だけど、実際のところ、悪魔も頭数が足りていない現状ではある。

 ここで罰して闇に葬ることが最善であるとは断定できない。

 

 

「わんチャンスっ! わんチャンスっ!」


 手を叩いてコールしてくる。必死なのか余裕なのか分からない困ったワンちゃんだ。よし……飼うか。気に入っちゃったし。あくまでも監視のため、と説明しておけば言い訳も立つだろう。


「分かったわ。あなたの処分は一旦保留にしてあげる。でも次はないから執行猶予ね。と言っても半永久の、だけど」


 半分脅しを含んだ私の温情に、おまわり悪魔犬はパァッと顔を明るくした。


「ありがとワン! 助かるなら何でも良いワン! それじゃあバイバイわん」


 くるんと私に背を向けて、ぷりんとしたお尻を揺らした。よく見ると、背中に小さな黒い羽も生えている。くそ、かわいいな。


「ちょっと……どこ行くのよ」

 こちらが軽く睨みを利かせると、小回り悪魔犬は振り返り、つぶらな瞳で見つめてきた。


「だって、見逃してくれるわん?」


「違うわよ。あなたは執行猶予つきで、逃げないように私のそばに置いておくの。これからずっと私の仕事を手伝ってもらうんだから。いっぱい働いてもらうわよ」

 

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