第2話 おしゃべりコーギー

 

「見たところ、まだ女子高生だわん? なのにもう、世の中を捨てた良い目をしてるわん。せっかくの飛び降りを中断して悪いわんが、ちょっとオイラに時間を分けて欲しいわん。決して悪い話じゃないわんよ。ハッハッ」


 しゃべくりコーギーだ。犬がしゃべっている上に、語尾も気になる。けれど、とりあえずはツッコミを入れないことにした。


「何か用なの?」


 私から返事があったことで、犬のおまわりさんは嬉しそうだ。


「物怖じしないところも好みだわん。別に、今さら貴様を助けたりはしないわん。このまま落ちることには変わりないわん。ただ、どうせ落ちて死んじゃうのなら、最後にひとつ貴様の願いを叶えてやろうと思ってるんだわん。ハッハッ」


「顔に似合わない『貴様』の違和感がすごいんだけど」


 笑う犬の暴言だ。とはいえ、調子の良い語り口は人と話すことに慣れていると感じる。

 隣の犬はよくしゃべくる犬だ。ひとしきり喋った後に舌を出してハッハッと言うのは、生理的なものではなく、意識的に興奮を抑えようとしているのだと思っておこう。

  

 「それで? いちおう確認なんだけど、願いってどんな願いでも叶えてくれるの?」


 コーギーはぶるぶるというより、ぷるぷるっと首を振って答えた。


「どっこい、オイラは見ての通り悪魔だから、人が喜びそうな願いは無理だわん。でも復讐ならバッチリOKだわん。貴様も飛び降りするくらいなら、殺したい相手の1人くらいいるわん? 道連れにしたって誰も文句は言わないわんよ? ハッハッ」


「悪魔なんだ……見た感じ犬のおまわりさんなのに」


「悪魔は見た目じゃないわん。人間と一緒だわん」


「確かに……人間は見た目じゃないわんね」


「マネすんなわん」

 ハッハッ、と言っておまわり悪魔犬は続ける。


「でも、願いを叶えるには交換条件があるわん。と言っても詐欺じゃないから安心して良いわん。貴様にはノーリスクだわん」


「その言い回しだと逆に怪しく感じるんだけど。すごく詐欺っぽいよ」


「ウソじゃないわん。オイラは、これから無駄になる貴様の寿命をいただくだけだわん。ハッハッ」

 

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