フローラと悪魔-1
フローラと悪魔-1
フローラは悩んでいた。剣を使って、異世界を接続する門を開くには、実際に契約をしなければ出来ないからだ。
交信に関しては、リスクが低いので、検証が楽だった。雪の女王、という比較的話しやすい相手が居たため、検証回数が稼げたのだ。
しかし、契約となると、リスクが跳ね上がる。女王と小さな契約を結んで検証できないかと、相談してみたのだが、これは流石に断られた。女王にとっても、リスクが小さくないからだ。
出来れば、一回の契約で検証を終わらせたい。剣に刻まれた門の術式を解きながら、検証方法について考えていた。
・・・・
城下の格納庫で、ザルツが作成したゴーレムの試作を調整している。それを、レギウスとアドニスが眺めていた。ゴーレムの駆動時間を延長する目途が付いたので、それを実地で説明することになったのだ。
ザルツが、調整をしながら、二人の魔力変化のパターンを観察する。レギウスの魔力変化のパターンは、興奮と期待を表しいる。アドニスの魔力変化のパターンは、レギウスのそれに近いが、それよりも小さい。だが、アドニスが黒鉄のドラゴンに目を移した時に、彼の魔力変化のパターンが変わった。懐かしさと罪悪感が大きく混じった動きを見せている。
ザルツは、これを頭の片隅に置いた。彼は、レギウスよりもアドニスの動向を重視しているからだ。
調整を終えたザルツが、ゴーレムの説明をする。
「ドラゴン型は見ての通り、航空移動と空中戦に長けた型になります。もう一つの蜘蛛型は、地上での移動と戦闘に長けた型になります。ドラゴン型の方が費用も掛かりますし、駆動時間もやや短い。数を揃えるのであれば、蜘蛛型の方が適しています」
レギウスが説明を聞きながら、頷いている。アドニスは疑問を口にした。
「現場で魔力が切れたら、どうするんだ?」
ザルツが答える。
「その場合は、現場で精霊魔術を使える場所を探すか、魔術師の数を集めて一時的に魔力を充填させて、後方に戻す、などが考えられます」
アドニスが言う。
「それは少し不便だな。魔力だけ何かに充填させて、それを後方から運ぶ、みたいなことは出来ないのか?」
それを聞いて、ザルツが思いつく。
「でしたら、魔力を充填させたものを取り外し出来るようにします。それを全ゴーレムの型で同じものを使うようにすれば、利便性も上がります」
アドニスが感心したように言う。
「それはいい。その方向で進めてくれ」
説明を聞いた二人は、帰っていった。ザルツが二人の魔力変化のパターンを見たが、それは満足したパターンを指している。ザルツも格納庫での作業を片づけると、都市の中にある、自分の研究室に向かいだした。
先ほどアドニスと話した改善点を考えながら歩いていると、フローラが歩いているのが見えた。その魔力変化のパターンは、悩みを示している。恐らく、門の研究が煮詰まっているのだろう。
フローラが足を止めて、ザルツを呼び止めた。
「どう、調子は?順調そうに見えるけど」
ザルツが答える。
「術式の起動条件の解明はおおむね終わりました。その過程で魔工術に応用できる機構が見つかったので、組み込んで検証しています」
それを聞いたフローラの、魔力変化のパターンが変わった。嫉妬と焦りのパターンを示してる。
ザルツは、フローラの、このパターン変化が意外だった。ザルツは、フローラの実力を知っている。彼女がザルツに引け目を感じる余地があるとは思えなかった。それに彼女は不死だ。焦る必要など全くない。
もしもザルツが、これをフローラに伝えれば、この後で起こる悲劇は回避出来たかもしれない。しかし、ザルツは何も言わなかった。彼は、他人の感情が分かるようになっても、それに共感するという機能は無かったからだ。
黙り込んだフローラを置いておいて、ザルツは自分の研究室に戻っていった。先ほどの改善点の設計をしたいからだ。
・・・・
フローラはザルツに暫く屋敷には来ないように伝えた。
そして、一人で膨大な量の紙を使って、何かを書き始めた。膨大な契約文の作成例を。
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