雪の女王とフローラ-4
雪の女王とフローラ-4
ザルツが城下街を歩いている。この男にしては珍しく、頭を休めるために散歩をしている。彼は現在、起動条件の一つである、感情の起伏と、それによる魔力変化のパターンの解析に取り組んでいる。正直、魔力充填機構に比べて、こちらの解析に時間を割くのは気が進まない。使い道がなさそうだからだ。
とは言え、彼はフローラの助手として働いている。自分の都合で勝手をするわけにもいかない。彼はその膨大なパターンを見つめ続け、頭がそれで埋め尽くされていた。もはや、剣の術式を確認しなくても、暗記してしまっているほどに、頭にこびりついている。それで、流石に疲れたので、こうして散歩に出かけているのだ。
その散歩している前に、二人の子供が走ってきた。ザルツはどこかで見たような気がするが、覚えていない。子供のことなど覚えていても、あまり役に立たないからだ。その後ろから、美しい女性が歩いてくる。流石に彼女のことは覚えていた。フローラの弟子であり、レギウスの妻、レムルだ。
レムルは自分の子供であるアントニウスと、ヴォルクスから預かったルーカスを連れて散歩に出ていた。ルーカスは、その境遇にも関わらず、明るく振舞っている。
アントニウスが、まだ小さい足で、ルーカスに向かって駆けていく。アントニウスが、ルーカスにお願いしている。
「まってよー、ルーカスお兄ちゃん」
ルーカスは、少し離れたところから、アントニウスを待ちながら言う。
「コケるなよ。アントニウス」
ルーカスは、自分より年下のアントニウスを可愛がっており、まるで兄弟のように見える。もしかしたら、自分が守れなかった家族に、重ね合わせているのかもしれない。レムルは嬉しそうな顔をして、二人を見つめながら歩いている。
そのレムルが、目の前を歩いているザルツに気が付いた。彼女は、誰にでも優しいが、ザルツに関してはそうではない。どこか嫌悪感を感じている。それが何故だかは、彼女もまだ良く分かっていない。彼の人らしからぬ感情の無さに、不気味さを覚えているのかもしれない。最近よくフローラと一緒に居ることに、嫉妬しているのかもしれない。
ザルツは、目の前のレムルを見た時に、何かを感じた。その魔力変化が、自分の暗記したパターンに似ていたからだ。レムルとすれ違った後で、距離が離れるにつれて、その魔力変化が収まるのも感じることが出来た。
ザルツは、他人が感情で動くという事自体は知っている。ただ、彼には感情の抑揚が無い。なので、他人がどのような感情でいるのかが、良く分からないことが多い。
だが、レムルとすれ違った時に、彼は気が付いた。この魔力変化のパターンを駆使すれば、魔力を見るだけで、他人がどのような感情でいるのかが、分かるのではないか、と。
それからしばらくの間、彼は城下街で出歩いて、人々を観察していった。何か騒動を起こしていたりして、分かりやすく感情を表している人間を探した。それなら流石にザルツであっても、表情を見るだけで、どのような感情が起動しているのかが分かるからだ。そして、その人間の魔力変化を確認して、それを感情と一致させる。彼は、感情と魔力変化のパターンの相関を割り出し、それを身につけていった。
ザルツが、完成に近づいていく・・・
・・・・
フローラも、異世界への通信網へ接続する術式の解明を進めていた。ザルツの進捗ほどではないが、こちらも順調に進んでいた。
これは、雪の女王との通信が頻繁に行えているのが理由として大きい。彼女との交信は、決して雑談だけが目的ではないのだ。雑談目的も結構大きいが・・・
フローラは、既に剣を使わずに、魔術のみで交信を出来ることを確認出来ている。あとはこれを術理としてまとめていけばいい。彼女は、これらをこう名付けた。
「召喚術」
フローラは、次の魔道の先がいよいよ近いこと確信し、興奮で鳥肌が立っている。フローラは机に置かれた剣を見つめた。
残るは、最後の難関である、異世界と異世界をつなぐ門の生成。フローラは知っている。これが、最も難しいであろう難関であることを。
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