ヴォルクスと雪の女王-5

ヴォルクスと雪の女王-5




ルーカスは、少しずつではあるが、ヴォルクスと話し始めた。

「アイツらが、家に押し入ってきて、それで・・・」

それ以上は、言葉が詰まる。ヴォルクスは一言だけ言う。

「そうか・・・」

ルーカスが、呟くように語る。

「僕は・・・なにも出来なかった。隠れていただけで、見ることも、出来なかった・・・聞くことも、出来なかった・・・」

ヴォルクスが言う。

「別に、自分を責める必要はない。悪いのはアイツらであって、絶対に君じゃない」

ルーカスの語る声が、震えはじめた。

「でも・・・でも・・・父さんも、母さんも、お兄ちゃんも、妹も、みんな・・・みんな・・・」

ルーカスの目に、涙が溢れてきた。


ルーカスは、泣いた。声を上げて、泣いた。

ヴォルクスは、感情の戻ったルーカスを、優しい目で見つめる。


ルーカスの時間が、二年ぶりに、動き始めた。




泣き止んだルーカスに、ヴォルクスが声を掛ける。

「ルーカス、君は、この後、どうしたい?」

ルーカスは、涙を拭きながら、考えている。ヴォルクスが続ける。

「君がこのままでいいなら、私は何もしない。ただ、君が何かをするのであれば、私は力をかそうと思う」

ルーカスが言う。

「家族に・・・会いたい」

ヴォルクスが、ルーカスに言う。

「君の家に戻ろう。あの時の行商人が、君の家族の墓を建ててくれた。君の家族に、会いに行こう」




二人は、家に戻ってきた。裏庭に作られた、4人の墓の前で、ルーカスとヴォルクスが立つ。その姿を、女王が見つめる。

ルーカスは、墓を見つめ続けた。そして、4人のそれぞので墓の前で、祈りを捧げていった。長い時間、捧げていた。


祈りを終えたルーカスが、振り返って、言う。

「ありがとう、ヴォルクス。ありがとう、女王様」

ヴォルクスは、嬉しそうに笑った。女王も、どこか嬉しそうにしているような気がする。

ルーカスが、剣をヴォルクスに差し出した。

「これ、要るんでしょ?」

ヴォルクスが尋ねる。

「もう、いいのかい?」

ルーカスが、ヴォルクスに言う。

「もう、大丈夫です。必要、ありません」

ルーカスが、女王に向かって言う。

「ありがとうございました。女王様。僕は、あなたに会えて、本当に嬉しかったです」

女王が少し恥ずかしそうにすると、ルーカスの首に手を回した。手を戻すと、ルーカスの首に青いアミュレットが着けられていた。女王が言う。

「これで、契約は終わりね。私も、貴方と会えて、嬉しかったわ。また何かあったら、いつでも声を掛けてね」

帰ろうとする女王に、ヴォルクスが尋ねた。

「貴方は、誰が帝国を滅ぼしたのか、御存じありませんか?悪魔、と呼ばれている者によって、竜王が倒され、帝国が滅ぼされたのではないかと考えているのですが・・・」

女王がヴォルクスの方を向いて言う。

「誰が滅ぼしたのか、とかは知らないけど、悪魔については知っている。アレは数千年前から生きている、最古の強者。我々のような者の中で、もっとも強い力を持つ。アレなら、竜王を殺すことも出来たかもしれないわね」

悪魔。それを聞いたヴォルクスの顔に、怒りが滲み出る。それを見た女王が忠告する。

「悪魔に手を出すつもり?やめておいた方がいいわよ。私に手も足も出ないのに、アレに勝てるなんて思わない方がいい。アレは、私よりも強いのだから」

ヴォルクスが、剣を握りしめた。恐らく、そうなのだろう・・・と。

女王が少し寂しそうな顔をしながら、ルーカスに手を振りながら、消えていく。ルーカスも、手を振り続けていた。




吹雪が止み始めた。

終わらない冬が、終わり始めた。春を飛び越えて、夏がやって来る。

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