ヴォルクスと雪の女王-3
ヴォルクスと雪の女王-3
ヴォルクスとフローラは、全力で吹雪の中心地から離脱していった。二人とも、何も言わずに全力で飛ぶ。あそこから離れないと不味いという直感は、来たばかりのフローラですら確信した。
全力で飛んだ先に森を見つけると、低空飛行をしつつ、森の中に紛れて行った。そして、森の中にあった大きな岩陰を見つけると、そこに降り立った。ヴォルクスもフローラも変化を解いた。二人とも、肩で息をしている。息を整えつつ、フローラがヴォルクスに聞いた。
「・・・なんなの、アレは?」
ヴォルクスも息を整えながら答える。
「雪の女王、だそうだ・・・」
フローラが焚火を起こした。この辺りはそれほど寒くはないが、汗をかいてしまったので、乾かさないと冷え込んでしまう。ヴォルクスも分厚いコートを脱いで、焚火に当っている。ヴォルクスがフローラに聞いた。
「・・・で、なんで君がここに居るんだ?後を付けて来たのか?」
フローラが返す。
「その前に、助けてあげたんだから、礼くらい言ったらどう?ありがとうございます、フローラ様。貴方は命の恩人です。って」
ヴォルクスが滅茶苦茶嫌そうな顔をした。この女にそんな借りは作りたくなかったのだが、実際にその通りなのが、あまりにも悔しい。
「ありがとうございます、フローラ様。貴方は命の恩人です」
ヴォルクスは、棒読みで言った。フローラはそんなヴォルクスを眺めて、内心で滅茶苦茶ゾクゾクしていた。ヴォルクスは、さっさと話しを変える。
「・・・で、なんで君が?」
フローラは付けてきたわけではない。ただ、レギウスとヴォルクスについて話していた時に、終わらない冬の話を聞いて、それが何となく気になったのだ。彼女の精霊魔術は、かなり完成度が上がってきており、ひと段落付きそうな状態になってきた。それで、次の研究テーマになりそうな新しいネタを探している最中だったのだ。彼女が、「創造性のある助手」を要望したのも、その辺りに理由がある。それで近くの都市まで来ていたのだが、そこでヴォルクスが吹雪に向かったと聞いて、気になって飛んできたのだ。
が、そんなことを正直に言う女ではない。彼女はフローラなのだ。
「貴方のことが心配になったのよ。だって、思いつめた顔をしていたし・・・」
フローラが、心配そうな顔をして言った。一応、三割くらいは嘘ではない。彼女は、割と本当に、ミオリアとヴォルクスに罪悪感を感じている。ヴォルクスが、胡散臭そうな目でフローラを見つめている。フローラが、その表情のまま、続ける。
「・・・それで、どういう理由であそこに居たの?その、雪の女王っていうのは、何?私は、貴方が心配なのよ・・・教えて?」
ヴォルクスは育ちが良い。なので、命を救われた上に、こういうド正論路線で問い詰められると、非常に弱い。ヴォルクスは、話さざる得なかった。ヴォルクスよりもはるかに短い時間しか生きていないフローラだが、彼女に掛かると、ヴォルクスは大変チョロかった。ヴォルクスは、剣のことも、それによって帝国が滅んだことも、フローラに話した。
フローラがそれを聞いて考えながら言う。
「その、雪の女王が、本当に帝国を滅ぼしたヤツなのかしら?帝国を滅ぼした時に現れたのは、巨大な獣人だったという言い伝えよね。でも、アレは大きな女だった。それに、帝国が滅んだ時に雪が降った、なんて話は聞いたことが無いけど・・・」
それを聞いて、ヴォルクスも考え込んだ。ヴォルクスは、崩壊当日には帝都に居なかったので、無事で済んだ。その後で、崩壊後の帝都に向かった。その現場は水害などで荒れ果てていたが、それでも先ほど見たような吹雪の痕跡などは残っていなかった。
「もしかして、亡くなったあの女は、雪の女王とは別のヤツと契約したのか?」
亡くなった女の、屋敷の地下室に残されていた契約文の中に「悪魔」という単語があったことを思い出した。何か抽象的な意味だと思っていたのだが、「雪の女王」のように、固有の名前を意味するものだったのだろうか?
フローラが言う。
「まあ、推論できるのはこの辺りまでじゃない?これ以上は、その剣を手に入れないと分からないと思う」
ヴォルクスも、そうだろうとは思う。だが、その剣が雪の女王に守られていて、手も足も出ない。ヴォルクスは考え始めた。フローラは、火に当たりながら、そんなヴォルクスを見つめる。ヴォルクスは、考えた末に、呟くように言う。
「・・・あの少年が鍵だ。雪の女王は、彼を守るような言動をしていた。私は、彼のことを詳しく知る必要がある」
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