レギウスとヴォルクス-6
レギウスとヴォルクス-6
ヴォルクスはしばらく間、城に滞在していた。ザルツの後見人として、様々な手続きがあったからだ。
その間に、ザルツは一つ発明をしていた。黒鉄のドラゴンに乗って城壁を越える時に見た、バリスタ。それを改良したのだ。
彼はバリスタに、魔力で駆動する連射機構を取り付けた。これによって、従来よりも標的への命中率が向上した。魔力は精霊魔術を使える者で供給してしまえばいい。これによって、襲ってくるドラゴン族への防御力が飛躍的に向上した。
これには、レギウスもアドニスも大喜びだった。レギウスとしては、自分の推し進めていた魔術推進事業から、目に見えた成果が出ることで立場が固まるし、アドニスとしても、簡単な改良で大きな結果が出たことに満足していた。ザルツの連射機構は、取り付けも簡単で、動かし方も従来とはあまり変わらないので、兵士たちの学習コストも少なかった。とても実用的だったのだ。
ザルツは、フローラの助手として採用されたが、真の雇用主はレギウスであり、アドニスであることを知っている。彼らを無下にせず、要望に応えておくことは、何かと役に立つと考えていた。
ザルツを助手として採用したフローラは、ザルツに精霊魔術を教えつつ、彼女の研究の手伝いをさせた。そして、彼が個人研究を行っている際に、彼の行っているゴーレム開発の行程を聞き出した。その一連の流れを聞いたフローラが、ザルツに言う。
「アンタのその才覚は分かった。ただ、今のままでは、その開発を出来る者がアンタだけになる。その行程を術理として、誰でも使えるように再構成しなさい」
ザルツは少しだけ面倒に思ったが、彼女のいう事にも一理あるとは思った。実際、精霊魔術はそれが整理されているがために、ザルツも理解することが出来ているのだ。自分も術理をまとめれば、面倒な仕事は他人にやらせることが出来る。ザルツは、まとめ始めたその術理に、こう名付けた。
「魔工術」
時代が才能を欲したからなのか、才能と才能が惹かれあったのか。1700年停滞していた魔術が、急速に進化を開始し始めた。
・・・・
後見人としての手続きを終えたヴォルクスが、城から旅立つ日がやって来た。レギウスが見送りに来た。ヴォルクスが礼を言う。
「君には色々と世話になった。ザルツのことは、よろしく頼む」
レギウスも礼を言う。
「ザルツを紹介してくれて、本当にありがとう。ちょっと変わっているけど、優秀だということは分かった。父も満足している。彼のことは、僕に任せてくれ!」
ヴォルクスも嬉しそうに笑う。レギウスが、ヴォルクスに聞いた。
「それで、次はどこに行くんだい?」
ヴォルクスが答える。
「ドラゴンの領域の北で、数年経っても、終わらない冬が出現していると聞いている。次はそこに向かうつもりだ」
終わらない冬・・・レギウスも、少しだけその話を聞いたことがあった。それがために、近年、飢えたドラゴン族が、攻撃を仕掛けてきているのだ。レギウスが疑問を口にする。
「終わらない冬って、一体何が起きているんだろうな?」
ヴォルクスが、顔を険しくしながら答える。
「私にも分からん。ただ、その冬の吹雪の中を、長い剣を抱えながら歩いている少年が居る、と聞いている。私は、その剣に用事があるんだ・・・」
ヴォルクスは、旅立った。両親を殺し、帝国を滅ぼすことになった原因かもしれない、その剣を見つけるために。
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