レギウスとヴォルクス-5

レギウスとヴォルクス-5




ヴォルクスがフローラと城の客間に居る。レギウスに頼んで一室を借りたのだ。

ヴォルクスが嫌悪感を滲ませつつ、フローラに言う。

「単刀直入に言おう。ミオリアを殺したのは、君だな」

フローラは不敵に笑いながら、答える。

「知らないわよ。何の話?」

ヴォルクスの顔に浮かぶ嫌悪に、怒りが混じり始めた。

「ミオリアが死んだ後で、引き継いだ巫女から私に、彼女の死因の調査をお願いされた。調べると、彼女の死んだ時期に、フローラという赤髪の女性が滞在していたことが分かった。そして今日、久しぶりに会う君は、十数年ぶりに会ったのに、何も変わっていない。君は・・・ミオリアの魂を喰ったな!?」

フローラは表情を変えずに、息を吸うように嘘を織り交ぜ、答える。

「だから知らないわよ。神殿に居たのは事実だけど、それは調べものをするため。ミオリアが死ぬ頃には、もう私は居なかった」

フローラは、神殿でミオリアの調査をするときに、ついでに自身の居た記録も改ざんしていた。記録上はそうなっている。フローラは続ける。

「それに、私の不死は相手の合意の上でやったこと。反魂の条件なら、貴方だって知っているでしょう?」

ヴォルクスは何も言わずに、フローラを睨みつける。彼ほどの力を持つ者であれば、フローラを殺すことは可能だろう。だが、確たる証拠が無ければ出来ない。ヴォルクスとはそういう男だった。

フローラは、そのヴォルクスを嬉しそうに見つめる。事実、嬉しかった。彼女は、子供の頃から、彼のその整った顔が、嫌悪や怒りで歪んでいく様を見るのが、大好きだった。

ヴォルクスは、後悔を滲ませつつ、フローラに言う。

「君に、ミオリアの話をした、私が愚かだった・・・」

そう、フローラがミオリアに目を付けたのは、ヴォルクスから聞いた古い話をヒントにしている。フローラは言う。

「ミオリアだって、別に慈悲深い聖女でもなんでもなかった。陰謀を駆使した魔女だった。敵だって多かったんだから、そう安易に私を犯人扱いするのは、止めてくれない?」

フローラの言葉を聞いて、ヴォルクスは悲しそうに言う。

「それでも・・・彼女は、私の、古い、大切な友人だったんだ・・・」

そのヴォルクスの表情を見て、フローラは内心でドキドキしてしまった。ヴォルクスの顔が、悲しみで歪む表情は珍しいのだ。彼が以前から、ミオリアに複雑な思いを抱いていたのは、薄々知っていた。竜王に恋募し続けているミオリアを語るとき、悲しそうな目をしていたのを見逃していない。

(もしも、私とミオリアの爛れた関係を暴露したら、この顔には、さらに嫉妬が加わって、もっとぐちゃぐちゃなるんだろうな)

フローラはそれを想像して、心の中で涎を垂らしている。とは言え、思うだけにする。それを言ったら流石に殺されるし、彼女自身もミオリアを死ぬまで喰らうつもりはなかったので、その辺りは後ろめたいのだ。

それに、レムルを育ててから、これでも多少丸くなっている、というのもある。


ヴォルクスが立ち上がった。これ以上は話しても埒が明かないと思ったのだろう。フローラは、ヴォルクスに言う。

「貴方は、本当に変わらないわね。顔も、性格も」

ヴォルクスが、フローラに答える。

「何百年も生きていると、自然とこうなる。君にもそのうち、分かるようになるだろう」

そう、ヴォルクスも不死だった。フローラのように後天的に不死になったのではない。彼は、生まれついての不死だった。フローラが、嘲笑しながら言う。

「流石、竜王の息子殿は、経験豊富でいらっしゃる」

そう、ヴォルクスは、竜王と、その寵姫との間に生まれた、一人息子だった。彼の名前は、竜王の親友だった男から取られている。


ヴォルクスはもう何も言わない。フローラを残して、部屋から出て行った。

フローラは、部屋を出て行くヴォルクスを、嬉しそうに見送った。


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