レギウスとヴォルクス-4

レギウスとヴォルクス-4




レギウスとヴォルクスは先に城に帰った。ザルツは準備を整えてから、後から来るとのことだった。帰った後で、来る日時を指定した手紙が届いた。レギウスは、その日に合わせてフローラにも来てもらうように手紙を送った。あとは、ザルツが彼女の目に適うかどうかに掛かっている。




当日になって、フローラが城にやって来た。城の中庭で、フローラがレギウスを睨みながら言う。

「本当に、今度はまともなヤツなんだろうね?これで駄目だったら、レムルを連れて帰るからね!」

レギウスは、冷や汗をかきながら、ザルツを待った。そろそろのはずだ・・・


城壁に居る兵士たちが、騒ぎ出した。

「ドラゴンが飛んできます!」

バリスタを装填している兵士の傍らで、ドラゴンを見つめていた兵士が叫んだ。

「いや、何か変だ!誰かが乗っている。そして、白旗を振っている!」

彼らの見つめるドラゴンは、四枚の翼を持った、漆黒のドラゴンだった。だが、よく見るとドラゴンではない。機械仕掛けのゴーレムだった。城壁の兵士たちは、皆がその目を奪われた。

城壁を越えた黒鉄のドラゴンは、低空を飛んで、城に向かっている。城下の皆が、空を見つめて、その黒鉄のドラゴンを見つめた。その異形のドラゴンは、どこか神々しさがあった。


城の中庭に向かったドラゴンは、その四枚の翼を折りたたみながら、ゆっくりと着地した。それに乗っていたザルツが、息を切らしながら降りてきた。

黒鉄のドラゴンを、キラキラとした目で見つめていたレギウスは、我に返った。そして、ザルツをフローラに紹介する。

「彼が、助手候補のザルツです。御覧の通り、ゴーレムの開発において、比類なき才能を持っています!」

フローラも、ザルツを括目していた。正直なところ要求として出した「創造性のある助手」という条件は、かなり諦めかけていた。フローラに匹敵するような創造性のある者など、そもそも居ないだろうと。

だが、目の前の男は違う。この黒鉄のドラゴンからあふれ出る才覚は、尋常ではない。

フローラは、自身の創造性に関しては、絶対の自信がある。ミオリアはフローラ以上の魔術師であったかもしれないが、それでも創造性にかけては、負けるとは思っていなかった。だが、そんな彼女の不可侵の領域に、目の前の男は割って入りうる可能性がある。彼女は久しぶりに思い出した。同レベルの相手に沸き立つ、嫉妬心と闘争心。フローラは、笑った。


ザルツは息を整えていた。彼の魔力では、このドラゴンを、それほど飛ばせないのだ。都市間移動など、今のままでは、とてもできない。まだまだ、試作品の段階だ。

なので、わざわざ城の近くまで馬車で運んできてから、白旗だけを持って、ここまで飛んできた。なぜ、わざわざそんなことをしたのかと言うと、それが、それを見る人々に対して、とても有効であることを知っているからだ。

彼は、自身の感情は、とても平坦な男だ。特定の感情以外は、抑揚が無い。それでも、他人が感情によって動く、という事は理解していた。そういった者に対して、どのように振舞うのが効率が良いのか、ということも理解していた。

なので、ドラゴンでここまで飛んできた。己の才覚を見せつけ、この後でやることを優位に進めるために。


騒ぎを聞きつけて、中庭にみんなが集まってきた。

アドニスは、黒鉄のドラゴンを、どこか懐かしそうな目で見ていた。親友であったベイルの変化した黒い飛竜に、どことなく似ていたからだ。

その他の者は、黒鉄のドラゴンを憧れるような目で、驚くような目で見ていた。

レムルは、ドラゴンよりも、ザルツのことが気になっていた。黒鉄のドラゴンに当った日差しが生み出す、濃い影の中で立っている、自分より少し年下の少年を。レムルは、他人を見る時に先入観と言うものを持たない。彼女は誰にでも優しい。その彼女が、ザルツを見て、一瞬だけ不穏に思った。なぜだか、分からない。ただ、感じた。


彼は、人なのだろうか・・・




フローラは、ザルツと少し話をした。変り者であることは分かったが、それ以上に、初見の精霊魔術に関しての洞察に関して満足した。フローラは、レギウスの方を向いて言う。

「やるじゃない、レギウス。彼なら、助手として不足はない」

レギウスは、それを聞いてほっとした。


フローラは、満足しながら中庭から出て行く。

その彼女の前に、一人の男が立ちふさがった。ヴォルクスだ。

フローラは、ヴォルクスを見て不敵に笑って、言う。

「あら、久しぶりね。貴方は相変わらず、何も変わらない」

ヴォルクスが、嫌悪感を顔に浮かべながら言う。

「この後で君を訪れようと思っていたが、手間が省けたな」

二人は、知り合いだった。

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