レギウスとヴォルクス-3
レギウスとヴォルクス-3
「ふーん、これが精霊魔術か・・・」
ザルツが、レギウスが持ってきた精霊魔術の概要についてまとめた本を読んでいる。本を読んでいるザルツに、レギウスが言う。
「そう。それを開発した魔術師、フローラが、助手を探している。ヴォルクスに相談したら、君を紹介されたから会いに来たんだ。どうだろう?考えてくれないかな?」
レギウスの見たところ、フローラの条件である「創造性」に関しては、申し分ないと判断した。若干性格が心配だが、フローラに合わせるなら、レムルぐらい滅茶苦茶優しいか、ザルツぐらい滅茶苦茶変でないと、どのみち無理だろうと思っている。
ザルツの反応が無い。完全に本に夢中になっている。レギウスがふと気になったことを言った。
「そういえば・・・ご両親はどちらに?」
ザルツが本を読みながら言う。
「死にました。後見人がヴォルクスです」
大変重要なことを、夕飯のメニューを言うくらいの流れで言われて、レギウスが面食らった。ヴォルクスが替わりに説明する。
「彼の両親は戦争で亡くなったんだ。父親が別の都市の要人だったんだが、そこがドラゴン族の領域に近くてね。ドラゴン族との戦いで負けて殺されてしまった。母親もその時に、ね。私は父親と面識があったので、その伝手で彼の後見人になることなった」
レギウスが合点した。家に入るときに、やけに気軽に入っていくな、と思ったが、後見人であるというなら納得できる。
ザルツがそれに補足した。
「正確に言うと、母は殺されたのではなく、敵将に奪われていきました。まあ、それから音沙汰がないので、死んだんだと思います」
レギウスが気の毒そうな顔をして、ザルツと見たが、彼は変わらずに本を読んでいる。ヴォルクスが彼の替わりに喋った。
「私としても、ザルツをこのまま屋敷に埋もれさせるのは、惜しいと思っていたんだ。彼には明らかに才能がある。レギウスに相談されて、これはチャンスかもしれないと思ったんだ」
レギウスがヴォルクスを見た。
(本当に、良いヤツだな。コイツは・・・)
そんなレギウスの気持ちとは裏腹に、ザルツは何かブツブツ言いながら、本に没頭している。このままだと、また何時間も待たされそうなので、話題を切り替えることにした。
「しかし、本当に凄いドラゴンだね。君はもしかして、ドラゴンが好きなのかい?」
ザルツがようやく目を本から離して、レギウスを見ながら言う。
「そうですね。好きです。あの造形が美しい。僕の作ったドラゴンは、飛ばすためにどうしても翼が増えてしまいましたが、それでも破綻のない造形を目指したつもりです」
思った以上に喰いつきが良い。レギウスが続けた。
「なるほど。どこかでドラゴンを見たのかい?」
ザルツが答えた。
「ええ、私のいた都市を襲った敵将が黒いドラゴンだったのです。その造形を見た時に、心が奪われました。その美しさに」
レギウスは、どう反応していいのか、分からなかった。
ヴォルクスがザルツに聞く。
「・・・それで、ザルツ、君はどうしたい?」
ザルツは少し悩んだ。正直なところ、精霊魔術そのものには興味がある。高出力の魔力には、様々な使い方がありそうだからだ。が、それとこれとは別だ。取れるものは、取らなくてはならない。
ザルツは、レギウスをチラリと見た。彼の境遇を知ったレギウスは、微笑を浮かべながら言う。
「何か必要なものがあれば言ってくれ。出来るだけ工面しよう」
では、と言う感じで、ザルツは要求を述べ始めた。
ザルツの要求は多岐に渡った。
・助手の仕事とは別に、個人研究の時間を確保して欲しい
・研究資金を用意してほしい
・開発には広い場所が必要なので、手配して欲しい
・鋼材加工のために、城下の鍛冶屋に協力して欲しい
・精霊魔術の使い手を、個人研究に使わせて欲しい
・etc
レギウスは、苦笑いをしながら、彼に同情したことを後悔した。
(本当に魔術師ってのは、こんなのばっかりかよ!)
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