レギウスとヴォルクス-2

レギウスとヴォルクス-2




太陽が真上から照らす日中に、レギウスとヴォルクスが到着した都市を歩いている。それほど大きい都市ではない。レギウスが周りを見渡しながら、少し不安になって呟く。

「本当に、こんなところにいるのか?」

ヴォルクスが、その気なしに言う。

「まあ、見ればわかるよ」


二人は、少し大きめの屋敷に着いた。ヴォルクスは玄関のベルを叩いて反応が無いのを見ると、鍵のかかっていないドアを開けて、勝手にずかずかと入っていく。レギウスが咎める。

「おいおい、いいのか?勝手に入って?」

ヴォルクスが振り返らずに言う。

「大丈夫だ。この屋敷には彼しか住んでいない。彼が応答に出ないときは、いつもこうしている」

そう言って入っていくヴォルクスを、レギウスも不安に思いながら付いて行った。


ヴォルクスが廊下を歩いている。ある部屋のドアの前に着くと、コンコンとドアをノックした。しばらくすると、中から面倒臭そうに返事をする、抑揚のない声が聞こえた。

「誰ですか?今は忙しいので、貴方のために思考処理を行う余裕が無いのです。つまらない用事なら帰ってください」

ヴォルクスが答える。

「ヴォルクスだ。君に合わせたい人が居るので連れて来た。入っても大丈夫かな?」

中かから再び抑揚のない声が聞こえてくる。

「ああ、ヴォルクスか。別に良いですけど、今は忙しいのです。部屋の中でしばらく待っていてください」

ヴォルクスがドアを開けて、部屋の中に入っていく。レギウスもそれに付いて行った。そして、部屋の中を見て驚いた。


ドラゴンが居る!いや、正確にはドラゴンではない。まるでドラゴンのように見える、大きな機械仕掛けのゴーレムがそこにあった。

見れば見るほど、素晴らしい造形をしている。4枚の薄い翼を持ち、複数の関節からなる、長い尾が弧を描いて、折り返されている。両手、両足には鋭い金属からなる爪が着けられており、全身が黒い板金の鱗に身を包まれ、見るからに頑丈そうだ。もはや、これはゴーレムなどというものではない。芸術作品と言って良い。

レギウスは、目をキラキラさせながら、ドラゴンを見つめた。

(カッコいい!これ、本当に動くんだろうか?見たい。動くところが滅茶苦茶見たい!)

ドラゴンの片隅で、一人の人間の少年が工具を片手に、無言で何やら調整をしている。レギウスは、邪魔をしないように、そっと距離を取った。


少年に戻った目で、機械仕掛けのドラゴンを、眺めるレギウスを尻目に、ヴォルクスは隅にあったソファに腰を下ろして、近くにあった本を手に取ると、その場でくつろぎ出した。

一通り感激したレギウスも、ヴォルクスのソファに向かい、ヴォルクスに小声で感激を伝える。

「凄い!本当に凄いな!ゴーレムってもっと無骨な岩の塊を想像していたけど、こんなにカッコいいドラゴンだなんて思わなかった。あそこで調整している少年が作ったんだよね?そういえば、彼の名前は何ていうんだ?」

ヴォルクスが本から目を放して、楽しそうにレギウスを見つめて言う。

「彼の名前はザルツ。君の言う通り、あのドラゴンは、彼の作品だ。初めて見た時は、私も君のように感激したよ」

ヴォルクスが続ける。

「あとは、彼が話せる状態になるまで待った方が良いだろうな。君も何か本でも読んで時間を潰したまえ。多分、本当に長い時間待たされるから・・・」

そう言うと、ヴォルクスは再び本に目を戻した。

二人は、待たされた。何時間も待たされた。昼間に来たはずなのに、夕方になるまで待たされた・・・




本を読んでいるヴォルクスと、本を読むのも飽きて頬杖をついて物思いに耽っているレギウスの前に、ザルツがやって来て、言う。

「あれ?ヴォルクスじゃないですか?いつの間に来ていたんですか?」

彼は、二人が来ていたことなど、完全に忘れていた。

これには流石に、普段は温和なレギウスも少しイラっとした。ヴォルクスは、やれやれ、と言う顔をしながら、読んでいた本を置いた。


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