レギウスとヴォルクス-1

レギウスとヴォルクス-1




フローラと約束を取り付けて、数か月が経った。フローラは約束通りに、時々城に来ては、城の魔術師たちに精霊魔術を使えるように、かなりスパルタだったが、教えてくれるようになった。レムルも子供を見る傍らで、教えてくれるようになった。こちらは非常に優しい。

典型的な飴と鞭の形になり、城の魔術師たちも、精霊魔術を扱えるようになってきた。

ただ、一つ問題があった。これが、レギウスを悩ませていた。


フローラの要求のうち、金回りは何とかなった。彼女はがめつかったが、どの程度取れるかは冷静に勘定していたから、そこまで無理ではなかった。

彼女の要求の中で、最も難しかったのは、金ではない。


「創造的な能力を持つ助手を用意しろ」


これを満たせるものが、城にも、都市にも、誰もいなかったのだ。誰を会わせて、「ハァ?」とか「舐めてるのか?」という回答しか来ない。

最近では、レギウスがフローラに会うと、毎回嫌味を言われている。終いには「約束を果たせないなら、レムルを返してもらおうか?」などと言われる始末。


困った。これは、本当に困った。レギウスは頭を抱えていた。次に会う時までに何とか目途を付けないと、本当にレムルを連れて帰りかねない。何といっても、相手はフローラなのだ。

そんなある日、一人の男がレギウスを訪ねて来た。




客室にその男がいる。レギウスがレムルと子供を連れて、紹介しに来た。レギウスが嬉しそうに言う。

「ヴォルクス!久しぶりだな。また会えてうれしいよ!彼女の名前はレムル。私の妻だ!」

レムルがヴォルクスと呼ばれた男を見た。長身で均等の取れた体。見た目はまだ若そうだ。あまり他人をそういう目で見ないレムルでさえ、思わず目が奪われてしまうような美形だった。

レムルがヴォルクスに挨拶をする。

「お初御目にかかります。レムルと申します。レギウスの妻です。この子は息子の、アントニウスです」

レギウスが、レムルにヴォルクスを説明した。

「彼は私が冒険していたときに、とてもお世話になった人なんだ。有名な冒険者なんだよ」

ヴォルクスは、嬉しそうに三人を見つめて言う。

「いやー、近くまで来たから寄ってみたんだが、まさか結婚しているとは思わなかった。それも凄い美人じゃないか!おまけに、もう子供までいるなんて!いや、本当にめでたい。何かお祝いでも持ってくるべきだったんだが、全然知らなかったので何も手持ちがないんだ。済まない!また今度、何か持ってくる」

頭を下げているヴォルクスを見て、レムルは笑った。凄い、いい人みたいだ。


レギウスが、ヴォルクスと二人で、客間に座って話をしている。

レギウスが、懐かしそうに話す。

「本当にあの時は助かったよ。危うく野垂れ死ぬところだった」

ヴォルクスも、懐かしそうに答える。

「あの時はまさか、荒れ地で道に迷っている男が、貴族の長男坊だとは思わなかったよ」

レギウスが、耳打ちするように言う。

「この話、レムルには内緒にしてくれ。彼女に会った時も、似たような状況だったんだよ。無駄に心配させてしまう」

ヴォルクスが呆れたように言う。

「また迷ったのか・・・君は、いい加減、一人で出歩かない方が良いんじゃないかな・・・」


昔話もそこそこに、二人は情報交換を始めた。ヴォルクスは各地を周って旅をしているので、様々な情報を持っているのだ。なので、レギウスはフローラの助手になりそうな人物に心当たりが無いかを聞いてみることにした。

「・・・という事なんだ。それで、助手になれそうな人物に心当たりはないだろうか?」

ヴォルクスが、少し考えている。

「フローラ、創造的な能力を持つ助手、ね・・・心当たりは、ないこともない・・・」

レギウスが、身を乗り出した。

「本当か!?紹介してもらえないだろうか?」

ヴォルクスが、少し悩みながら、言う。

「ここから少し離れた小さな都市に住んでいる少年なんだが、とても精妙なゴーレムを作ることで地元では有名なんだ。創造的な能力、という面では申し分ないはずだ。ただ・・・結構、変わった子だな」

レギウスが、それを聞いて少し考える。

(変わっている、と言う意味ではフローラだってそうだ。今さらもう一人くらい増えても、大丈夫だろう・・・)

レギウスが、ヴォルクスを見つめて頼み込む。

「変わっていても構わない。どうか、紹介してくれないか。紹介して下さい。お願いします!」

頭を下げるレギウスを見て、ヴォルクスが笑って言う。

「そこまで言われたら断れないな。まあ、ちょうどいい結婚祝いになりそうだ。分かった、紹介するよ!」


こうして、二人はその少年のいる都市に向かうことになった。


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