レムルとレギウス-4
レムルとレギウス-4
レムルはアドニスに認められた。今まで渋っていた理由を聞かれて、アドニスが「実は・・・長い黒髪が苦手なんだ・・・」と正直に言うと、レムルがその髪をバッサリ切ろうとし始めたので、全員が止めに入った。
だったら切らずに、まとめあげてしまえばいいだろう、という事で、義母がレムルの髪をまとめている。義母が髪をまとめながら言う。
「本当にごめんね。頭の固い旦那が色々と失礼なことを言って。でも良かったわ。レムルが義娘になってくれて」
レムルが嬉しそうに答えた。
「私も、嬉しいです。義父様と義母様の御家族になれて」
義母は笑顔になりながら、レムルの長い黒髪をまとめ上げ、頭上に黒い大輪の花を咲かせた。
こうして、二人は、無事、結婚することとなった。
・・・・
それから2年ほどが経った。
二台の馬車が、フローラの屋敷に向かっている。一台にはレギウスとアドニスが、もう一台にはレムルが、赤子の息子を抱いて乗っている。そう、二人には子供が出来た。その子供を、フローラに顔見せするために、レムルの里帰りのために、三人と赤子はフローラの屋敷に向かっている。
「いやー、レムルさんを育てた人ってのは、どのような方なんだろうな。きっと素晴らしい方なんだろうな!」
アドニスが楽しみで仕方ないという顔で、レギウスに言った。レムルは結婚式の招待状をフローラにも送ったのだが、フローラは「今は忙しいから」と言って来なかったのだ。レギウスは、アドニスの言葉には反応せず、目を逸らした。・・・まあ、会えばわかるだろう。
まず最初にレギウスが単独でフローラに会う。そして、レムルが戦闘で精霊魔術を使ったことを説明した。それを聞いて、フローラはブチ切れた。
「あの子を、戦闘に引っ張り出すとは、どういうことだ!貴様、灰になる覚悟は出来ているんだろうな!?」
レギウスはこの展開を予想していた。そこで、予めレムルと打ち合わせていた。このタイミングで、レムルが子供を抱いて部屋に入ってくる。レムルと赤ん坊を見た瞬間、フローラの顔が緩んだ。
「レムル!来てたのね。それに、子供!?やだー可愛いじゃない」
これによってレギウスが灰になる運命は回避された。ここで、レギウスが畳み掛ける。
「はい。レムルを戦場に出すわけにはいきません。なので、精霊魔術を、城の他の魔術師でも扱えるようにしてもよろしいでしょうか?」
今回のレギウスの最重要目的は、これだった。
レギウスは、レムルの精霊魔術を初めて見た時に、衝撃を受けた。人間であるレムルにこれほどの魔力があるとは思わなかったからだ。そして、その後でレムルの説明を聞いたとき、これだと思った。
レギウスは、アドニスの跡継ぎとしてどうすればいいのかを、ずっと悩んでいた。アドニスのようにドラゴンになれるわけでもなければ、統率力があるわけでもない。レギウスが度々冒険のようなことをするのは、跡継ぎとしてどうすればいいのかを、彼なりに探るために行っていたのだ。
それで最初はレムルに精霊魔術を教えてもらおうかと思ったのだが、「これを作ったのは、フローラなので、彼女の許可を取ってからにしたい」と言われてしまった。しかし、レギウスには、フローラを説得できる自信が無い。ちょうどその頃に、レムルの妊娠が発覚したので、子供を利用することに後ろめたさを感じつつも、今回の計画を考えたのである。
フローラは、レギウスを睨みながら、少し考えた。実のところ、フローラは精霊魔術が広まること自体は構わない。むしろ、広まってしかるべき、と思っている。ただ、それはフローラの名声とセットでなければ許せない。なので、ちゃんと許可を取りに来たレギウスを、少し見直していた。が、それとこれとは別だ。取れるものは、取らなくてはならない。
「まあ、少しは考えてもいいけど・・・精霊魔術だって、色々と、掛かるモノは掛かっているからね・・・」
レギウスは、これも予想していた。ここで、アドニスを部屋に呼んだ。金回りの話を、レギウスで勝手に決めるわけにはいかないからだ。子供を抱いて部屋から出て行くレムルと入れ替わる形で、アドニスが、嬉しそうな顔をして、部屋に入ってきた。
「初めまして。私がレギウスの父、アドニスと申します。騎士団長などもやっております。貴方様が、フローラ様ですね。貴方のお育てになったレムルさんは、本当に素晴らしい方です。是非とも一度、お会いしたかった」
嬉しそうなアドニスを、フローラは獲物を見るような目で見つめる。レギウスは気を入れ直した。交渉は・・・ここからだ。
フローラの要求は多岐に渡った。
・研究資金を用意しろ
・アドニスの都市に研究施設を用意しろ
・精霊魔術の教本の序文には「偉大なる賢竜フローラ様の功績である」と入れるよう徹底しろ
・創造的な能力を持つ助手を用意しろ
・etc
長時間に渡る交渉の末、何とか精霊魔術を教わることへの同意を取り付けた。フローラは、満足そうにレギウスとアドニスを見つめながら言う。
「まあ、そこまで言うならしょうがないわね。私も鬼じゃないから、いいわよ。教えてあげる」
フローラという女は、対峙する者に膨大な情報処理を要求する女であった。レギウスとアドニスは、疲れ切っていた。
レムルが子供を抱いて、また部屋に入ってきた。部屋に居る、皆を見つめて言う。
「お話はまとまったようですね。お茶を用意しましたので、皆さん、ご休憩ください」
帰りの馬車で、アドニスが疲れた顔をして呟いた。
「凄い・・・女だったな・・・」
レギウスは、口元に薄ら笑いを浮かべつつ、目を逸らした。
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