レムルとレギウス-3
レムルとレギウス-3
城壁の上から、兵士たちが固定式の石弓であるバリスタや、手持ちのクロスボウで、飛竜を狙って打つ。当たらなくても、動きを阻害出来ればそれでいい。はるか昔に比べたら、ドラゴンになれる者の絶対数が減ってきているので、飛竜自体はそれほど数が多くない。ただ、単純に地上部隊の兵士たちが多い。
ドラゴン族は喰うに困ると、略奪のために周囲に攻め込む、というパターンを取る。最近では、北の方で終わらない雪嵐が起きているらしく、ドラゴン族たちの領域で飢饉が発生している。それで、ここいら一帯のドラゴン族たちの利害が一致して、とりあえずアドニスの領地に侵攻してきた、というのが今回の攻撃の背景のようだ。
アドニスも事前の調査でその辺りは予測していたため、こういうことがあった場合に取るべき行動などは、領民などにも伝えてある。
アドニスとレギウスが城門の前で部隊を展開している。まだ避難出来ていない住民たちが居るので、殿を務めているのだ。アドニスは岩竜に変身して、最前線で戦っている。アドニスが、敵を蹴散らしながら、レギウスに警告する。
「お前は、あまり前に出すぎるなよ!」
レギウスはドラゴンに変身できない。レギウスは言いつけを守りながらも、歯噛みしていた。俺にも、もっと力があれば・・・
住民の避難が終わったので、アドニスたちも徐々に後退していく。もうすぐで城門まで下がれる、と思った、その時だった。突如として、部隊の両側から挟み込むようにして、敵の部隊が飛び出してきた。三方向を囲まれる形になったアドニスたちが、窮地に陥る。ここで崩れてしまうと、城門を突破されてしまうので、不味い。アドニスが吠えた。
「俺が抑えるから、お前らは先に城門に入れ!」
アドニスが、目の前に広がる敵兵を見て、思った。
息子にも嫁が出来るし、まあ、いいか。この辺で死んでも・・・
アドニスは、いつも、どこかで、死に場所を探していた。
その時、突如として、アドニスの目の前に巨大な土壁がそびえ立った。目の前だけではない、アドニスの周囲、城門の周りに、もう一つの城壁が出来るかの如く、巨大な土壁が姿を現した。
味方も、敵も、皆が驚いた。魔術であることは間違いない、ただ、これほどの巨大な土壁を突如として生み出せるほどの魔術師など、見たことが無い。普通は、そもそも魔力が足りないからだ。恐らくは、伝承に出てくるドラゴンとかが使うレベルの魔力が必要になるはずだ。
レギウスが後ろを見た。杖を振って、魔力を操作している女性がいる。レムルだ。レギウスは驚いた。レムルは人間に過ぎない。人間にこれほどの魔力など、無いはずだからだ。
そう、レムルには別にそれほどの魔力は無い。無いが、問題なかった。なぜなら、魔力は自前でなく、その土地から拝借しているからだ。彼女が城の外で歩いていたのは、別に人気取りのためではない。どこに魔力の供給口があるかを探すためだった。
これが、フローラの開発していた新魔術。1700年前に作られた魔術の「生命力を魔力に変換する」という根幹から考え直した、全く新しいアプローチ。フローラは、ああいった性格だが、それが許されうるだけのことは、やってのけた。彼女は、この新魔術をこう名付けた。
「精霊魔術」
全員の避難が終わった後で、城門が無事閉じられた。敵も撤退していった。あのレベルの魔術を見て、恐れをなしたのだ。
息を切らせて座り込んだアドニスに、レムルが心配そうに近づいてきた。
「大丈夫でしょうか・・・アドニス様・・・」
アドニスは、呼吸を整えて、レムルを見上げた。腰ほどもある黒髪、その目が、ミオリアに似ていた。だが、その目には、ミオリアからは感じなかった、優しさがあった。アドニスは、気まずそうに言う。
「・・・本当に助かった。ありがとう。あと、もう、お義父様、で大丈夫だ・・・」
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