レムルとレギウス-2
レムルとレギウス-2
アドニスが馬に乗って城壁の外に出て見回りをしている。この城は竜王の墓のある都市の東に位置しており、影響力の外周部の一番外側にある。その先は影響力の及ばないドラゴン族達が、勢力争いを繰り広げている。彼らの矛先がいつこちらを向くのか分からない。そのような場所であるからこそ、騎士団長のアドニスが錨のように、この位置を防衛している。最近は近くに住むドラゴン族の動きが活発になっている、という報告があるので、気が抜けない。
アドニスが見回りから帰って、城門をくぐると、小さな人だかりが出来ている。何かと思ってみてみると、あの女、いや、息子の連れてきた女が中心にいた。
彼女の周りの人だかりには、色々な人がいる。美人を一目見ようとして来た男、噂話の好きな女、遊んでほしそうな子供、かまって欲しそうな老人などなど。レムルは優しいので、誰であっても無下にはしない。なので、徐々に人気が出始めつつあった。
妻からも「いい子じゃないの?何が不満なの?」と言われている。アドニスにしてみると、勝手に外堀が埋められているような気がしてならない。もちろんレムルは計算ずくでやるような女ではないが、アドニスの主観では、不気味に映るのだ。ミオリアがアドニスの魂に刻んだ恐怖は、生半可なものではなかった。何せ、親友殺しまですることになったのだから・・・
アドニスに気が付いたレムルが、馬に乗っているアドニスの近くまでやってきて、挨拶をする。
「お勤め、ご苦労様です。・・・お義父様」
アドニスが、少し緊張しているレムルに答える。
「ああ、まだ、君の、お義父様、ではないがね」
それを聞いたレムルが、少し悲しそうに目線を下げた。周りの野次馬たちが、アドニスに不満そうな目線を向ける。
アドニスは気まずくなって、その場から離れて行った。
アドニスが部屋に帰ると、レギウスが話しかけてきた。
「父さん。レムルの何が気に入らないのか良く分からないのだけど、せめてもう少し話ぐらい、してみて貰えないでしょうか?」
アドニスは、気まずくて息子の顔を見ることが出来ない。適当に誤魔化すことにした。
「その前に、お前も、もう少し私の跡継ぎという自覚を持て。なぜ、事前に何も相談せずに、勝手なことをする。この領地は、とても危険な場所にあるのだ。今でも、油断できるような状況ではないのだぞ!」
レギウスにも、何も相談せずに連れて来た、という自覚はあるので、そこを突かれると少し弱い。
アドニスの説得は、困難を極めた。
アドニスが一人で部屋で仕事をしている。彼には昔から、解決しない問題があると、目の前の問題に取り掛かって誤魔化す癖があった。
一仕事を終えて、ため息を付きながら顔を上げて、誰も居ない部屋を見つめる。理屈では、レムルに問題ないであろうことは分かっている。だが、どうしても、あの長い黒髪を見ると、心が、魂が拒否反応をしてしまう。
アドニスが考え込んでいると、慌ただしい様子で、部下の兵士が部屋のノックもそこそこに、飛び込んできた。兵士が、慌てた様子で報告する。
「ドラゴン族どもが、こちらに向かってきています!」
アドニスは、頭を切り替えて、立ち上がった。
アドニスが外に出ると、既に兵士たちが持ち場について対応を開始していた。レギウスも駆けつけた。
「父さん!ドラゴン族です。それも、数が多い!」
アドニスが苦い顔をした。大声で兵士たちに指示を出す。
「総員、持ち場に付け!訓練通りにやれ!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます