レムルとレギウス-1
レムルとレギウス-1
フローラの屋敷のあった火山の麓から、森を抜けて少し行った場所にある都市に、レムルとレギウスを載せた馬車向かっている。彼らは城門から城壁を抜けて、城の前に着いた。レギウスは、この城の城主の息子なのだ。
馬車からレギウスが降りて、その後で降りてくるレムルの手を取る。周囲の見張りの兵たちが、彼女を見つめた。
(凄い、美人だ・・・)
兵士たちはレギウスを羨ましそうに見つめた。
レムルの手を引いて、父の、領主の部屋に向かう。彼は多忙だが、今日はこの部屋に居るはずだった。レギウスがドアを叩いて、部屋の中に入っていく。レムルもその後に続いた。
父は、机に向かって仕事をしている。頭に髪の毛は、無い。レギウスが父を呼ぶ。
「父さん。今日は、大切な人を連れてきた」
父は、事前に手紙で知らされていたので、驚いてはいない。が、少し呆れていた。跡継ぎなのに、突然、誰だか分からん相手を連れてくるとは何事だ、と。父は、息子の隣に居る女性に目を移した。
彼は、驚いた。彼女の雰囲気が、余りにも、知っている女に、ミオリアに似ていたから・・・彼女は、死んだはずなのに・・・
彼の頭に、過去のトラウマが、一気に流れ込んだ。彼は、突然、泡を吹いて倒れた。
そう、彼は、レギウスの父は、アドニスだった。
突如倒れた父に、レギウスは驚いた。レムルも思わず悲鳴を上げた!
倒れた父を、レギウスとレムルが必死になって声を掛ける。レギウスが誰かを呼ぼうと、部屋から出ようとした時だった。アドニスが起き上がった。
「だ、大丈夫ですか?」
レムルが心配そうに声を掛けた。レギウスも、振りむいて父に呼びかける。
「今から医者を呼んできます!」
そのレギウスを、アドニスが片手で制しながら言う。
「いや、大丈夫だ。ただの過労だ。そんなに大騒ぎをせんでもよろしい」
アドニスが、二人の前に立って、ハンカチで汗を拭きながら、自己紹介をする。
「いや、大変申し訳ない。最近、忙しくてね。ともかく、私が、レギウスの父のアドニスだ」
まさか、息子の連れ来た女が、陰謀を駆使してアドニスに親友殺しをさせた、あの魔性の女とダブった、などとは言えない。
レムルは、心配そうにアドニスを見つめて、やや緊張気味に、言う。
「大丈夫、でしょうか?やはりお医者様を呼ばれた方が良いのでは?」
アドニスが、少し顔をこわばらせながら、レムルを見つめる。あの高慢さはないが、雰囲気が何となく似ている。
(女の趣味は、血筋で決まるのだろうか?)
とか思っても、口には出さない。
「・・・大丈夫だ。問題ない」
アドニスは、ぎこちなくレムルに言った。
レギウスが口を開いた。
「それで、手紙にも書いたんだけど、家族に紹介したいと思って連れてきた」
レムルが言う。
「改めて、初めまして。レムルと申します。レギウスのお父様にお会いできて光栄です。しばらく御厄介になりますが、よろしくお願いいたします」
アドニスは固い顔をしている。
(どれだけ初対面で印象が良くても、実際はどうなるか分からん。特に、黒髪の美女は・・・)
レムルとアドニスが、横目で目を見合わせた。どうやら、すんなりとは行かなさそうだ。
「あらー、素敵な子じゃない。やるじゃないの、レギウス!」
レギウスの母が、レムルをべた褒めしている。レギウスの母は貴族出身なので、立ち振る舞いなどにはうるさい方なのだが、その彼女から見ても、レムルは完璧だった。あのフローラが磨いたのだから、当然であろう。
その上、彼女はとても優しい性格なのが、あらゆる点から滲み出ている。とりあえず、レギウスの母からは合格のようだ。
その他の親族にもお見えした感じでは、第一印象は、おおむね合格であった。家柄を少し指摘されたが、一旦は高名な魔術師の出だと言っておいた。
「母は、フローラは、とても有能は魔術師です。・・・ただ、世間で有名なのかは、存じ上げません」
レギウスは、レムルの説明を横で聞きながら、ふと疑問に思った。確かに、フローラという魔術師が居る、という話は聞いたことが無い。
だが、野盗に襲われそうになった時に助けに来たフローラの殺気、あの魔力を見れば、只者ではないことが分かる。あれほどの圧を持つ魔術師は、この城でも見たことが無い。
レギウスが、二人きりになったときに聞いてみた。
「フローラは、火山の麓の屋敷で魔術の研究をしていた、って言っていたけど、それは普通の魔術とは違うの?」
レムルが答える。
「そうね。やって見せた方がいいんだろうけど、少し準備が要るの。数日ほどお時間を頂ける?」
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