フローラとレムル-5

フローラとレムル-5




レギウスがベットから降りて、歩こうとしていると、レムルが近づいてきて、言う。

「大丈夫?あんまり無理しちゃ、だめですよ」

レギウスが答える。

「おかげさまで、だいぶ良くなってきました。そろそろ歩いてみようかと思って」

そう言って、レギウスが腰を上げて立とうとした直後、足の傷が思いっきり痛んだ。思わず呻き声を上げて、再び腰がベットに戻った。レムルが慌てた様子で、レギウスに向かう。

「やっぱり、駄目じゃないですか。もう暫くは、じっとしていてください」

レギウスが、面目無さそうにベットに戻った。レギウスがレムルに話しかける。

「しかし、こんなところに屋敷があったんですね。本当に命拾いしました。本当にありがとうございました」

レムルが微笑みながら言う。

「もう、そんなにお礼ばかり言わなくても、大丈夫ですよ。ここに屋敷があるのは、魔術の実験のためですね。フローラがそのために建てたそうです」

レギウスが、フローラを思い浮かべる。この屋敷に連れてこられたときに、言われた「元居た場所に捨ててきなさい!」は流石に衝撃的だった。

レギウスがレムルに聞く。

「レムルさんは、フローラさんの、お弟子さんなんですか?」

レムルが少し寂しそうに、答える。

「・・・昔、この辺りに捨てられた私を、ここまで育ててくれたんです。師なのは、そうですね・・・」

レギウスが慌てた。あんな感じだけど、もしかしたら意外と優しい人なのかもしれない。レギウスは言い直した。

「そうなると、レムルさんの、育ての親、なんですね!」

レムルは、嬉しくはにかんだ。それを見て、レギウスはドキドキしてしまった。凄く、可愛い。


その日を境に、レムルとレギウスは、よく話すようになった。

レギウスはこの近くに住んでおり、度々冒険のような形で、遠出をしていた。今回は帰還途中で、道に迷った末に崖から落ちて、足を怪我していたところを、レムルに助けられた。ちょうど以前助けた鳥を返すために、その辺りに居たらしい。レギウスがレムルに言う。

「優しいんですね」

レムルが恥ずかしそうに、顔を赤らめて答える。

「私は、フローラに拾われて、助かったので・・・私は、フローラに憧れているんです。だから私も、同じことをしようと思って・・・」

レギウスは、レムルを見てドキドキしてしまっている。なんて・・・優しい人なんだ・・・。彼は、完全にレムルに惚れてしまった。

「レムルさんは・・・本当に、素敵な人ですね・・・」

レギウスは、思ったことを、そのまま言った。それを聞いたレムルは、赤くなった顔を、ますます赤くして、下を向いた。


それから、レギウスは、レムルを口説いた。彼は普段はそんなことはしない男なのだが、今回は真剣に口説いた。レムルも口説かれて、悪い気はしなかった。レギウスが優しい人であることは、言葉の端々から分かったからだ。

「もしレムルがよければ、一度、うちに来てもらえないかな?」

レギウスのこの問いかけに、レムルは赤面して頷いた。レギウスは、心の中でガッツポーズを決めた!




「レムルが、レギウスに、付いて行く!?」

フローラが、目の前の二人の前で、ドスの効いた声で、復唱した。レムルは、フローラを真っすぐ見つめている。レギウスも真っすぐ見つめているが、内心は滅茶苦茶怖い。

フローラの目線が、レギウスに向かった。レギウスに、ドスの効いた声で、追及する。

「それは、どういう意味かな?言ってごらん。ねえ?」

レギウスは汗でびっしょりになりながら、フローラに答える。

「・・・私の家族に、紹介したいと思いまして。レムルはとても素敵な女性だと・・・」

フローラは、気に入らない。すでに、レムルを呼び捨てにしている関係、というのが気に入らない。レムルが口を開いた。

「私も、レギウスの家族の方々にお会いしたいの。フローラ、許してくれませんか?」

フローラは、レギウスから目線を放さない。

(レムルもその気だと・・・この馬の骨、どうやって誑かしたんだ)

フローラはブチ切れた。

「駄目!駄目と言ったら駄目!そんな馬の骨だか何だか分からん男に付いて行くとか!絶対に駄目!」

レムルが泣きそうな目でフローラを睨んでいる。レギウスもフローラに頼み込んだ。

「頼む!フローラ!本当に、俺は彼女が好きなんだ!」

レギウスが思わずフローラを呼び捨てにしてしまった。それを聞いたフローラが、ドスの効いた眼で、レギウスを睨みながら言う。

「ハァ!?フローラ!?だと。貴様、何のつもりだ!フローラ様と呼べ!フローラ様と!」

フローラは止まらない。

「大体、一週間そこいらで、どういうつもりだ!?だから拾ってきた時に、捨ててこいと言ったんだ。こんな男を拾ってくるなんて。もういい!今度は私が捨ててくる!」

理不尽にキレ散らかすフローラに、とうとうレムルもキレた。

「フローラの馬鹿!いい加減、そんな子供扱いしないで!もう、知らない!」

そう言って、レムルは屋敷から飛び出していった。


馬鹿!?馬鹿!?フローラの、馬鹿!?


レムルの罵倒が、フローラの頭の中でこだましている。今まで、レムルがフローラに、こんなことを言ったことなど、一度もなかった。とても、いい子だったのだ。それが、馬鹿!?

フローラは呆然として、膝から崩れ落ちた。


な、ん、だ、と!?私が・・・私が・・・この馬の骨に・・・負けたというのか・・・


レギウスは、走り去ったレムルと、突然崩れ落ちたフローラを交互に見てから、フローラに顔を向ける。

「フローラ・・・様、俺はレムルを追います!」

そう言って、レギウスはレムルを追って走っていった。

フローラに反応はない。崩れ落ちたまま、呆然と床を見つめ続けていた。





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