フローラとレムル-4

フローラとレムル-4




あれから、更に数年が過ぎた・・・


フローラはソファに転がって、悩んでいた。悩みは、レムルについてだ。


フローラの見込みの通り、レムルはとても美しい少女に成長した。通りすがった者はまず振り返るであろう美貌。腰まで伸びた美しい黒髪は、かつて貪ったミオリアと瓜二つであった。

魔術に関しても、フローラが徹底的に仕込んだ甲斐もあり、大変素晴らしい成果を出せるようになっている。すでにフローラの助手としても欠かせない存在になった。

ここまでは計画通りだった。完璧と言っても過言ではない。ただ一つ、想定外の事態が発生した。


ソファで悩んでいるフローラを見たレムルが、心配そうに声を掛ける。

「フローラ、大丈夫?具合が悪いの?」

フローラがレムルの方を見て、笑って答える。

「んーごめん、ごめん。ちょっと悩んでいただけだから。心配しないで」

それでもレムルはフローラを心配そうに見つめる。そして、フローラの額に手を当てながら呟く。

「んー、熱とかはなさそうだね。疲れているのかな?ちょっと甘い物でも用意してくるね」

そう言ってレムルは台所の方に歩いて行った。


フローラは、自分が高慢な性格であることに関しては自覚的である。そんな自分が育てるのだから、当然、レムルも高慢に育つに違いないと思っていた。

しかし、そんなことはなかった。想定外の事態とは、これだった。

レムルは、滅茶苦茶いい子に育ってしまったのだ。


フローラは博愛主義から、とても遠い女だ。しかし、レムルは博愛主義に、とても近い女になってしまった。

優しいのはフローラに対してだけでない。大体、誰にでも優しい。それで子供はすぐに懐くし、男は大体惚れる。


これは困った。フローラの好みは、高慢な女を貪ることなのだ。これでは計画が台無しだ。だからと言ってレムルを放り出す気にもならない。何といっても、物凄くいい子なのだ。

余りにいい子過ぎて、レムルの前ではフローラも、過激なことをするのは控えるようになった程だ。


大変贅沢な悩みではあるが、フローラという女はプライドが高いので、自分の計画が失敗したという事実を受け入れ難い。なので、こんな馬鹿みたいなことで唸っている。




・・・・




そんな日常を送っていた、ある日のことだった。


レムルが屋敷に、足に怪我をして、行倒れた男を拾ってきたのだ。フローラはいつものように「元居た場所に捨ててきなさい!」と言ったのだが、レムルは当然のように却下した。

レムルは一室のベットにその男を寝かせて、介護することになった。

フローラは大目に見ることにした。昔から、鳥やら、犬やら、猫やら、怪我をしていたら拾ってくる子だ。今回も似たようなものだろう、と。


数日して、男は回復してきた。男の名前はレギウスと言った。彼は助けてくれたレムルとフローラに、何度もお礼を言った。

フローラにしてみれば、礼などいいから、さっさと出ていけ、という気分だった。口に出さなかったのは、ひとえにレムルが嬉しそうだったからに過ぎない。フローラは横目でレギウスを見ながら、部屋から出て行った。どこぞの馬の骨だか分からんヤツが、レムルに介護されたのだ。せいぜい光栄に思え、という気分だった。口には出さなかったが。

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