ミオリアとフローラ-3

ミオリアとフローラ-3




「・・・ミオリア様、最近はお疲れなのでしょうか?」

側近の女が、ミオリアを熱っぽい目で見上げながら言った。ミオリアは、女を撫でながら、言う。

「ごめんなさい。ちょっと最近、考え事が多くて・・・」

ミオリアの最近のお気に入りの女なのだが、しばらくは一緒に過ごしていない。女が、口を尖らせて、文句を言う。

「絶対に、あの女のせいですよね。フローラのせいです」

ミオリアが窘めるように言った。

「あまりそういうことを言ってはいけませんよ」

とは言え、ミオリアが疲れているのは、フローラのせいであった。


フローラは、ああいう性格なので、同性受けが非常に悪い。神殿の女は大体が彼女のことを嫌っているのだが、彼女はまるでそれを意に介していない。嫌われていても、仕事自体は出来るので、その点を咎めることは出来ない。ちょくちょく神殿の女たちから、ミオリアにフローラの文句が入るのだが、表立って指摘できる点自体はあまりないので、対処が難しい。

信頼関係の無い状態で仕事を続けるのは難しいのだが、フローラはそれを何とかする気がなさそうに見える。やはり、彼女はここに長居するつもりが無いようにしか思えない。


ミオリアは、引き続きフローラを警戒しているので、彼女の動向自体はある程度確認している。最近では、神殿であった過去事例の調査をしているらしい。

(いっそのこと、さっさと目的を達して、出て行ってもらえないだろうか・・・)

ミオリアは、疲れた頭で、天を仰いだ。




・・・・




ある日、ミオリアが庭を歩いていると、フローラがひょっこりと顔を出した。

「ミオリア様。今、お時間を頂けないでしょうか?」

どう考えても、何かを企んでいる顔をしている。出来れば無視したいのだが、立場上はそうもいかない。

「・・・なんでしょうか?あまり時間は取れないのですが・・・」

フローラが言う。

「大丈夫です。そんなにお時間は必要ありません。私に付いて来てもらえないでしょうか?」

そう言って、フローラは歩いていく。ミオリアはそれに付いて行く。フローラは、外にある、墓所の方に向かっている。ミオリアは、嫌な予感がしてきた。

フローラが、ある墳墓の前に着くと、くるっと回って、ミオリアを下から見上げるように見つめた。

「あの後、探したんですよ。寵姫様の埋葬されているお墓。ここだったんですね」

ミオリアは何も言わない。フローラの目的が何なのか、何となく分かってきたからだ。フローラは、ミオリアに構わず、続ける。

「私、神殿に残された過去の記録を調査していたんですよ。ミオリア様もご存じだと思いますけど」

フローラは、完全にミオリアを舐め切っている。

「で、分かったんですよ。この寵姫様のお墓って、古いは古いんですが、竜王様と寵姫様の亡くなった直後でなく、その後に作られたんですよね?なんでか、御存じですか?」

ミオリアは答えない。答えたくない。

「・・・ミオリア様って、実は嘘をつくのが下手ですよね。嘘をつくと、不自然なくらいに無表情になっちゃうんですよね」

フローラが、残酷な表情をしながら、事実を述べていく。

「実は、竜王様と、寵姫様は、同じ場所に埋葬されていたんですよ。でも、ある人が、その後で別々にしたんですよね。誰でしょうね?」

ミオリアは無表情のままだ。決壊しそうな感情を、なんとか取り繕っている。

フローラが、ミオリアに近づき、その口をミオリアの耳に近づけて、囁く。

「ねえ?なんで、別々にしたの?ミオリア?ねえ、なんで?」


ミオリアが頭を掻きむしって、その場にしゃがみ込んだ。ブルブルと震えている。この女は、全部分かっている。この神殿にくる前から、ある程度当たりを付けた上で、その上で、詰めたうえで、私に付きつけている。

ミオリアが、乱れた髪の間から、フローラを見上げる。フローラは残酷そうな光悦の表情をして、ミオリアを見下ろしている。


フローラの目的は、ミオリアそのものだった。

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