ベイルとアドニス-1
ベイルとアドニス-1
ベイルはドロスを喰ったが、だからと言ってすぐに傭兵団を継承できるかというと、そうでもなかった。
まずドロスが居なくなったことで、ドロスだからこそ付いてきたというメンバーが抜けた。ドロスの副隊長も、傭兵の引退、という形で抜けることになった。
また、ドラゴンの風習による継承、と言っても、別に拘束力があるわけではない。ドラゴンの風習、とはいえ、はるか昔の風習だし、そもそも傭兵団にはドラゴンでない者も多い。
「あんなの・・・ついていけねーよ」
と言って、抜ける者が少なからず出た。
あまりの光景に嫌悪感を感じた末、という理由もあるし、そもそも、ベイルに付いていけない、と感じる者も多かった。
それでも残る者はいた。
ベイルの壮絶さに、逆に高ぶった者も居るし、アドニスが居るなら、まあ大丈夫だろう、と思う者も居た。
アドニスが主要メンバーを説得して回り、なんとか六人ほどの若い有力なメンバーを小隊長として留めることに成功した。彼らはそれぞれがドラゴンに変身でき、部隊のリーダーとして、兵士たちをまとめられる男たちだ。これだけいれば、とりあえず傭兵団としての体裁は保てると言って良いだろう。アドニスはほっとした。
こうして、ベイル隊長、アドニス副隊長と六人の小隊長で傭兵団を切り盛りしていく事となった。
・・・・
ベイルとアドニスが、ある都市を並んで歩いていた。次の契約相手と会うために、相手のいる場所に向かっている最中だ。
ベイルが周りを見渡しながら、言う。
「海辺の都市か。結構デカいな」
周りには、様々の商店が並んでいて、活気がある。魔術の道具も豊富に並んでおり、魔力で動く、岩のゴーレムなども売っている。この都市は、魔術の取り扱いに長けた都市でも有名だった。
アドニスも、同じように周りを見ながら、言う。
「なんでも、かつての竜王の故郷だったらしい。次の契約相手は、その竜王の墓を祭っている巫女だそうだ」
ベイルが反応した。
「巫女・・・女なのか?」
アドニスが、少し警戒しながら答える。
「ああ・・・凄い美人らしいけど、お前、絶対に変なこと言うなよ・・・」
ベイルは、女に見境が無いところがある。昔から娼婦たちに人気があり、色々な意味で可愛がってもらっていたため、貞操観念が少しおかしくなってしまったようだ。
ベイルが後頭部で手を組みながら、言う。
「分かっている。そう心配しなくてもいい」
アドニスは念を押す。
「絶対だからな・・・」
二人は、都市の真ん中にあるドーム状の墓に併設された神殿までやって来た。案内役が二人を見つけると、誘導するように言った。
「こちらです。私に付いて来て下さい」
案内役も女だ。それも可愛い。どうやら、巫女の側近らしい。
明らかにベイルの目の色が変わっている。アドニスは再び、不安そうにベイルを見る。本当に大丈夫なんだろうな・・・
・・・とは言え、アドニスだって気持ちは分からないこともない。傭兵団の娼婦たちと違い、どこか気品のある女。惹かれてしまうのも無理はない。
ベイルが、側近の女に声を掛ける。
「巫女様が、この街の領主をされているのでしょうか?」
アドニスが、ベイルを呆れたように見つめる。お前・・・そんな喋り方が出来たんだな・・・
女が回答する。
「そうですね・・・実質的には領主、と言えなくはないかもしれません。巫女として300年を生きていらっしゃる方なので、この街でも権威的な存在であります」
ベイルが、目を丸くして、思わず声を出す。
「300年!?」
女が、慣れているように、ベイルの反応に返す。
「ええ、巫女様、ミオリア様は、300年を生きられている人魚であられます。竜王が亡くなられる以前から、この地で墓を祀っていらっしゃったそうです」
アドニスは人魚にあったことが無い。人魚はめったに居ないからだ。ふと静かになったベイルを見ると、がっかりしたような顔をしている。300歳は流石に範囲外らしい。
色々と失礼なので、アドニスが会話を引き継いだ。
「300年という事は、竜王が亡くなる前ですよね。その頃から墓があったのですか?」
女が、思い出すような答える。
「・・・なんでも、竜王の昔の知り合い?の墓があったそうです。それも1000年以上前から。その方も人魚だったそうですよ。だからというわけではないのですが、この墓の巫女は人魚が担う事が多いそうです」
時間軸のスケールがおかしくなってきた。アドニスが言葉に詰まっていると、女が扉の前で止まった。
「この先に、ミオリア様がいらっしゃいます。是非とも、失礼、の無いように、お願いいたします!」
目線が、明らかにベイルの方を向いている。アドニスも心配そうにベイルを見る。
二人の内心は一致していた。
・・・コイツは、本当に大丈夫なんだろうか?
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