ドロスとベイル-3

ドロスとベイル-3




ベイルとアドニスが、二人で並んで話している。アドニスが、ベイルに尋ねた。

「お前はどんな時にドラゴンになったんだ?」

ベイルが、過去の記憶を漁る前に、アドニスに聞く。

「なんでそんなことを聞くんだよ?」

アドニスがそれに答える。

「ドラゴンが変身するのは、自分でも知らなかった、自分の中の何かにキレた時だ。つまりそれに関わることが、一番キレやすい。お前はなんにでもキレるから厄介だけど、そのキレやすいところが分かれば、もう少し自分を制御できるかもしれない」

ベイルは、ドラゴンに変身した時のことを思い出しながら、言う。

「母さんと妹が連れていかれて殺されて、そのあとで親父が殺されたときに、ドラゴンになった、と思う」

アドニスが、気の毒そうな顔をした。ベイルの顔色があまり変わっていないのを見て、アドニスが言う。

「・・・そうなると、親父さんが大事だったのか?」

ベイルが眉間にシワを作って、答えた。

「全然。ずっと殺してやろうかと思っていた。母さんが苦労したのは、全部アイツのせいだ!」

アドニスが、謎に満ちた顔をした。

「え?だったらなんでそこでキレたんだ?」

アドニスの疑問に、ベイルが呟くように答える。

「俺にもよく分からん」


ベイルとアドニスはこんな感じで、一緒に過ごすことが多くなった。歳と共に戦場に出るようになると、二人は一緒に組んで戦った。

ベイルは戦場においても勇猛果敢だった。黒い飛竜に変身できることもあり、戦場ではいの一番に切り込んで、突破口を作って行く。

アドニスは冷静沈着だった。一人で突っ込みがちなベイルが孤立しないように気を配りつつ、ベイルの作った突破口を仲間を指揮して広げていく。岩のような灰色の岩竜となれるアドニスは、戦場で構える、錨のような役割を果たしていた。

二人は理想的なコンビだった。戦場で名を上げ、傭兵団の中でも中心的な存在になりつつあった。


ベイルは時々、ドロスに決闘を挑んだ。剣で挑むこともあるし、ドラゴンになって戦いを挑むこともあった。成長するに従って、ドロスも手加減して軽くあしらえなくなってきたが、それでもベイルはドロスに勝てなかった。

いつものように、やられたベイルは、ベットで娼婦たちに看病されていた。見舞いに来たアドニスが、言う。

「今回は惜しかったな」

ベイルは手を握りしめて、呟いた。

「次は、絶対に殺す!」




・・・・




しかし、ベイルに次の機会は訪れなかった。ある戦いで、ドロスが致命傷を負ったのだ。ドロスはベットで寝ている。傭兵団付きの医者が診ている傍らで、副隊長、アドニスが見下ろしていた。医者が残念そうに言う。

「殺しても、死なないヤツだと、思っていたのにな・・・」

ドロスが苦痛を悟られないように我慢しながら、いつもの調子で言う。

「まあ、年貢の納め時ってヤツだな。アンタにも長いこと世話になった」

ドロスが目線を医者から、副隊長とアドニスの二人に移す。副隊長とアドニスが残念そうな顔をしていた。

「辛気臭い顔をしてんじゃねーよ。傭兵なら、よくあることだろうが」

ドロスは一見乱暴そうで、粗雑そうに見える。だが、戦闘における行動は合理的で、普段の粗雑さにも、荒くれ者をまとめるための繊細さがあった。彼は傭兵団のリーダーとして、敬意を集められる存在だったのだ。

二人とも悲しいのはそうなのだが、今後の傭兵団をどうするべきかを悩んでもいた。順当にいけば副隊長が繰り上がるのではあるが、彼はサポート役に徹していたので、ドロスの役割をそのまま埋められる感じではない。と、言うよりはドロスの穴を埋められる者など、居ない。

ドロスは、悩んでいる二人を見て、聞く。

「そういえば、ベイルのヤツはどうした?」

副隊長は、アドニスに目配せをする。アドニスが答える。

「・・・アイツなら、表でキレ散らかしていたから、取り押さえました。数人がかりで」

ベイルは、今まで見たことがないほどにキレていた。ドラゴンになってブチ切れたので、アドニスを含めた、他のドラゴンになれるもの全員で、抑え込まなければならないほどだった。

今は、人型の状態で、紐でグルグル巻きに縛ってある。この状態で縛ってしまえば、ドラゴンになっても動けないからだ。

「・・・アイツを呼んで来い」

ドロスがアドニスに言った。

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