初等部へ

 2010年4月、私たちは蒼流女子学院の初等部に入学した。


 入学式の朝、楓ちゃんが私の家に来た。二人とも初めて袖を通す制服。紺の襟がついた白いセーラーのAラインワンピース。サファイアブルーのスカーフ、白いハイソックス、黒いローファー。

「さやちゃん、似合ってる」

「かえでちゃんも」

 玄関の鏡の前で、二人並んで立った。同じ制服、同じ背の高さ。真新しいランドセルを背負った私たちを、両親達が写真に残してくれた。


 入学式では、隣同士に座った。校長先生の話を聞きながら、楓ちゃんがそっと私の手を握ってきた。私も握り返す。二人で一緒なら、何も怖くない。


 夏は同型の半袖に替わり、軽い素材が風に揺れた。髪は肩まで伸び、楓ちゃんの黒髪は艶やかで、朝の光にさらさらと流れた。


 教室でも廊下でも手を繋いで歩いた。休み時間、二人で手を繋いで窓の外を見ていると、何人かの女の子が近づいてきた。

「ねえ、二人はいつも一緒だね」

「うん。幼稚園の時から」

 嬉しい時は抱き合って頬にキスをした。最初、周りの子は少し驚いた顔をしたけれど、すぐに「仲良しだね」と言って、一緒に笑ってくれるようになった。

「幼なじみって、ちょっと羨ましい」

 ある女の子がそう言った。私は楓ちゃんの手を握って、にっこり笑った。

「かえでちゃんは、私の宝物だよ」

 楓ちゃんが顔を赤くして抱きしめてくれた。

「私も、さやちゃんが宝物」

 周りの女の子たちが「かわいい」と笑った。誰も変だとは言わなかった。むしろ、羨ましそうな目で見ていた。

 その日の帰り道、楓ちゃんが言った。

「さやちゃん、みんなの前で『宝物』って言ってくれて、嬉しかった」

「本当のことだもん」

「私も。さやちゃんは、私の一番大切な宝物」


 二人で手を繋いで、黒い車に乗った。窓の外、桜の花びらが風に舞っていた。新しい生活が始まったけれど、一番大切なものは変わらない。楓ちゃんと一緒にいること。それが私の幸せ。

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