第九話 使われ方
己は、便宜上、術師と名乗っている。
登録上も、そうなっている。
術師というのは、基本的に目立つ。
それが悪いという話ではないが、現代社会において街中で行えることは限られている。
霊怪現象への対処には、事前の調整が要る。
警察、自治体、管理窓口。
必要な手続きを踏み、場所を押さえ、人払いを行い、それからようやく術が使われる。
段取りが多い。
人数も要る。
だから小回りの利く者は、重宝されやすい。
派手な術を使わず、
人目を集めず、
説明を必要としない者。
己に回ってくるのは、そういう案件だ。
夜になると鳴る音。
誰も触れていないのに動く物。
気配だけが残り続ける場所。
放置すれば不安が膨らみ、
だが大事にするほどでもない。
術師を呼ぶには大げさで、
放っておくには煩わしい。
そういう現象。
己は、向かう。
着替え、柄を選び、終わらせる。
術は使わない。
正確には、術と呼ばれるものを展開しない。
結果として、現象が収まればそれでいい。
一般人から見れば、
己は多少着込んだ者にしか見えないだろう。
着物だが、目立つ色ではない。
柄も、崩さなければ主張しない。
騒ぎにならない。
通報も要らない。
それが理由だ。
仕事は続く。
評価は増えないが、減りもしない。
指示は簡潔で、
報告も短い。
「対応済み」
それで終わる。
特別ではない。
だが、代わりもいない。
己の普段は、そういうものだ。
─────────────────────
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます