第5話 黒ギャルと読書の時間
翌朝の
「おっはよー!」
彼女は仲良しの
「
「おはよう豹堂さん。これ、約束の漫画」
「やったー! ありがと縞田っち!」
勇馬が渡した『ばどくら』全巻セットに、クロミは舞い上がっていた。
――昨日、勇馬はクロミとメッセージアプリのトークで、彼女に『ばどくら』の原作漫画を貸す約束をしていた。
善は急げということで早速今日、紙袋に詰めて持ってきた次第である。
二人がそんな風に話していると、横から玲音と恵那が
「何? お前らそんな仲良かったっけ?」
「私の記憶だと、昨日の放課後まではクロミが一方的に絡んでいるだけだった。つまり、昨日の放課後に何かあったということ」
説明しろ、と言わんばかりの二人に、クロミは包み隠さず内情を告げる。
「昨日
「……あ? クロミ、お前それマジ?」
その言葉に反応したのは玲音だ。
声には怒気がこもり、片方の眉を吊り上げている。
そう言えば、昨日会話の中で狩野先輩と玲音が付き合っていたという内容があったはずだ。きっと、二人の間にもいろいろあったのだろう。
「あのクソ男……! アタシがダメだからって、クロミに手ぇ出しやがったか……! わりぃ、後でシメとくわ」
怒りに震える玲音に、クロミは「ほどほどにしときなー?」と声をかけた。
「で、クロミ。お前あいつに絡まれて、なんともなかったか?」
「うん。玲音から狩野先輩の話聞いてたから、誘われても拒否ってたし。それに――」
と、クロミは勇馬の肩に手を置いて言う。
「縞田っちが助けてくれたしね!」
じゃーん! と
そんな勇馬に対し、美少女二人――特に玲音が、値踏みするような視線をぶつけてきた。
「ふうん……こいつがね……」
「玲音とえなちにも見て欲しかったよ~! あん時の縞田っち、マジヒーローだったから!」
「状況は理解した。それで、こっちの漫画は何?」
「昨日貸す約束をしたんだ。豹堂さん、この作品が好きらしくって、僕がその漫画を持ってたから」
「………………そう」
恵那の問いに勇馬が答えると、彼女は露骨に視線を逸らした。
(……え? ぼ、僕、なんか灰谷さんに避けられてる……?)
勇馬が恵那と言葉を交わすのはこれが初めてだった。
だがこの反応は明らかに避けられている時のそれだ。
平和主義者の名に誓って、嫌われるような行いをした覚えはないのだが……。
「クロミ、あんたこんなオタクっぽいの好きだったっけ?」
「好き好き! ちょー好き! つかあーし『ばどくら』のこと玲音にもめちゃ語ってたじゃん!」
「あーね」
クロミの言葉を適当に躱す玲音。
チラリと勇馬の漫画を見た時も蔑むような目をしていたし、やはり彼女はちょっぴり怖い。
「それより縞田っち! HRまで時間あるし、一緒に『ばどくら』読もーぜ!」
「ええ……ふ、二人で……?」
「だって一人で読むのとかつまんないじゃん! ほらほら、あーしこっち持ってるから!」
そうして、クロミは自分の椅子を持ってきて勇馬とぴったりくっつき、『ばどくら』を一巻から開く。
勇馬が右側、クロミが左側を持って一緒に読む形だ。
だが元々、本は一人で読むために作られたもの。
二人で読むとどうしても字が見づらかったり、端っこに何が描いてあるかわかりづらかったりする。
そのせいで――
「んん……? 縞田っち、ちょい手ぇどけて」
「わ、わかった……」
「あ、このシーンアニメで見た!」
「う、うん。アニメはほぼ漫画版なぞってるから、全部見たことあるシーンだと思うけどね……」
隣に座るクロミが身を乗り出してくるものだから、彼女の頭が勇馬の眼前にやって来る。
不意に女子特有の甘ったるい香りが鼻を掠めて、勇馬は否応なしにドキドキさせられる。
ようやくクロミが体勢を戻してくれたと思ったら、
――ゆさっ、ゆさっ。
視界の左端で、クロミのデカい胸が揺れている。
漫画に目を落とす以上、その箇所はどうしても視界に入ってしまうのだが……。
彼女がブラウスを第二ボタンまで開けているせいで、なだらかな谷間が丸見えだ。
「あははっ! ここのばっどちゃんと
それどころか、ばいんっ、とせり出したおっぱいが邪魔で、左端のページが隠れてしまっているではないか。
(「見えないから胸どけてください」とは言えないしなぁ……)
もう一緒に漫画を読むとか、それどころではない。
内容なんて一切頭に入ってこなかった。
……まあ、勇馬は何度も読み返しているので問題はないのだが。
そうしてHRが始まるまでの間、勇馬はこの気まずい空間をただひたすらに耐え忍んだ。
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草食系男子ですが、肉食系の美少女たちから狙われています マイルドな味わい @mildtaste
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