第2話 リュウキとケイジュ

森の中を、二人は暫く歩いた。

半刻程経っても一向に目的地に着かない事に、ケイジュは少しずつイラつきを覚え始めた。


ケイジュ「ねぇ…まだ歩くの…?俺もう歩くの無理なんだけど…。」


リュウキ「あと少しだから頑張れよ!確かそろそろ…あ!あれだ!」


そう言ってリュウキは前の方向に指を差す。

その場所には何尺か分からない程の大きさを誇る巨樹があった。


ケイジュ「木…?大きい穴…。」


目の前の巨大な樹木の根元には、人が幾らでも入れる程の穴が空いていた。


リュウキ「早く来いよ!入るぞ!」


その言葉を聞き、最後の力を振り絞る様に、脚を動かして穴に入るケイジュと、ケイジュが穴の中に入るのを待った後に、自身も穴に入ったリュウキ。


リュウキ「ここが俺の家だ!すげぇだろ!」


ケイジュが辺りを見回すと、腰掛けれる椅子や、脚が三本しか無いが、しっかりと立っている座卓。

そして人が五人は隠れる程の大きさの布。


ケイジュ「凄い…。」


今まで寝床など日に日に変わっていたケイジュには、こんな光景すら、凄いと感想が口から出る程だった。


リュウキ「ずっと歩いて疲れただろ?ほらほら座って座って。」


背中を押され、椅子に座るケイジュを背に、座卓の下から何かを出す。


リュウキ「はいこれ!この森で採れたやつ!なんて言うか分かんねぇけど、すげぇ美味いんだよ、これ。」


リュウキが座卓の上に並べたのは、梨や柿、そして葡萄だった。


ケイジュ「あ、知ってる。これは梨で、これは柿って言って、こっちは葡萄って言うんだって。」


名も知らずに食べていたリュウキは、突然名前を教えてきたケイジュに対して、驚いた。


リュウキ「へぇ〜お前すげぇな、知ってるやつ見た事ねぇよ俺!」


リュウキ(何だ、俺から話振ってねぇのに、いきなり話してきたな。それに表情も少し和らいでる。)


ケイジュを褒めつつ、冷静に分析をするリュウキ。

血塗れで、更には弱々しい言動や雰囲気だったので、警戒などしていなかったが、改めて考えて見ると、そこまでの怪我を負っているにも関わらず、会話ができ、歩く事もできる者など、今まで見てきた子供の中には一人も居なかった。

そして何より気になったのは………


リュウキ(こいつから感じる力…!俺と同じモノ…いや…似てるけど少し違うか…?それにさっき話したモンスターの話を聞くに…)


気になったリュウキは、夢中になって柿を食べているケイジュに聞いてみることにした。


リュウキ「…なぁ、お前さ、何か凄い力が使えたりしないか?」


ケイジュ「んぇ?」


リュウキ「あー悪い、それ飲み込んでからでいい。」


ケイジュ(モギュモギュ、ゴクンッ)


ケイジュ「凄い力…?分かんないな…見た事も…」


そこまで言うとケイジュはさっき、モンスターに襲われた時のことを思い出した。

目を瞑っていたので何が起こったか見てはいなかったが、自身の体内に、何か力が湧き出ていた事、気が付けばモンスターが遠くへ吹き飛んでいた事、周りが黒焦げになっていた事が、頭の中に、鮮明に蘇る。


ケイジュ「………」


リュウキ「その様子からして、心当たりがあるんだな?」


リュウキの言葉に、現実に引き戻されたケイジュは、恐る恐る口を開く。


ケイジュ「…あ…れ……お………れが……?」


ケイジュ「…あんな事…しちゃったから…?…みんな酷い事しようとしたの…?」


自身があんな事をした、それにできるなどとは考えてもいなかったケイジュは、自分が怖くなり始めた。


『人間の皮をかぶった化け物め!殺してやる!』


そして、自身がそんな事をできる力を持っているから、大人達が自分を殺そうとしたのではとも思った。


リュウキ「おい!」


いきなりこっちに向かって叫んだリュウキの声に、ハッとするケイジュ。

すぐにリュウキの顔を見る。


リュウキ「何があったかは知らねぇけどさ、とりあえずお前には、何か分かんねぇけど、力があるって事は分かったな。」


リュウキ「その様子だと、力の使い方とかも知らねぇんだろ。それなら早い方がいいな。ちょっと外に来い。」


急に色々言われたので、情報が処理しきれなかったが、最後に外に来いと言われたので、持っていた柿を座卓に置き、外に出た。






外に来た二人。

リュウキはケイジュに話し始める。


リュウキ「落ち着いてなくても聞けよ?お前が感じてる力は、俺も何かは知らねぇ。でもな、その力はな、俺が考えるに、多分モンスターが持ってる力と似てる物だ。」


ケイジュ「え?」


リュウキ「お前多分、モンスターの事を火で飛ばしたんだろうな。」


リュウキ「でも咄嗟に使ったから、上手く扱えなくて周りまで燃えちまった…てとこか?」


ケイジュ「待って!ちょっと!」


リュウキ「まぁ土壇場で使えるなんて、俺はモンスターと変な奴らが使ってるのを見てやっと出来る「だから待ってってば!」…悪い悪い、流石に立て続けだったか。」


ケイジュ「さっきから聞いてたけど、モンスターと、同じってどういう事!?それに火で飛ばした!?分かんないよなにそれ!!」


頬を膨らませているケイジュ。


リュウキ「まぁ一つ一つ説明するわ。」


リュウキ「まずモンスターと同じ力ってのは俺の考えだ。お前がどういうモンスターや人間を見てきたか知らねぇけど、俺はモンスターが、火とか水を出してるのを見た事がある。」


リュウキ「そして、モンスターや人に対して、火と水をぶつけてる人間も見た事がある。俺はそれを見て、モンスターが使ってる力と、同じ力を持っている人間がいると思った。」


ケイジュ「それで…同じ力って…?」


リュウキ「そう、まぁでも俺の考えってだけで、間違ってるかもしれねぇけど。」


リュウキ「後、これは俺の話になるけど、俺も使えねぇかなって思ったんだ。だってさ、火とか水とか出せたら、モンスターは焼けるし、喉が渇いてもすぐに水とか飲めるんだぜ?使えた方が良いじゃん!」


リュウキ「前々からさ、身体の中に何か力がある様な感覚はあったから、色々試したんだよ。」


ケイジュ「試したって…どんな?」


リュウキ「出ろ!って言ってみたり、身体中動かしたりな!手足とか頭とか、あとは…」


そう言うとリュウキは身にまとっている布を捲った。


リュウキ「こことかも!!」


ケイジュ「!!?それは見せなくても良いよぉ!!」


ケイジュが赤面して、顔を逸らしてる間に、リュウキは布を持ってる手を離した。


リュウキ「でも出なくてさ〜。そんな事してたらヘトヘトになっちまって。水が欲しくなったけど周りには川もねぇし。」


リュウキ「そんでさ、手から水が出ればな〜って思って、手から水が出る事を夢を思い浮かべてたら、いつの間にか手が濡れてたんだ。」


ケイジュ「それってもしかして…」


リュウキ「そ、俺ももしかしたらって思ってさ、また手から水が出る事を思い浮かべながら手を見てたんだよ!そしたらさ!!」


リュウキ「少しだけだけど水が出たんだよ!!」


嬉々として語るリュウキを見て、いつの間にかケイジュも少しだけだが嬉しく思っていた。


リュウキ「そんで今度は火も出してみようって思って、同じ事考えたらさ、出来たんだ!!ほら!!」


話してる内に気分が上がったのだろう。リュウキは右手から火、左手から水の球体を出した。


ケイジュ「…わぁ、丸い。でも熱くないの?」


リュウキ「そうなんだよな、でも何か丸い方を思い浮かべたら簡単だったし、熱くはないんだけど、落ちてた棒に火付けたら、いきなり熱くなってさ、全然分かんねぇんだ。」


そう言い終わると、両手に出した火と水をパッと消したしまいながら、リュウキは、ケイジュを外に来させた理由を話し始めた。


リュウキ「で、お前を外に来させたのは、お前にもこれが使えるようになって欲しくてさ。」


ケイジュ「え?俺に?」


リュウキ「そ、つまり練習だな。家の中でやって、火が付いたりずぶ濡れになるのは勘弁だからな。」


ケイジュ「そ、そんないきなり!」


リュウキ「それにこれはお前の為でもあるんだぞ?」


ケイジュ「お、れの為?」


リュウキ「だってその力、扱えないとまた、周りを燃やしちゃったり、人から怖がられたり嫌われたりするぞ?」


ケイジュ「!!」


それを聞いてケイジュの表情が曇る。

が、直後に決心した様な顔で、リュウキと顔を合わせる。


ケイジュ「分かった…!やる…!!」


その言葉にリュウキは、


リュウキ「そうか!頑張れよ!」


そう返したが、


リュウキ(これで水がもっと飲めるし、モンスターが来たら楽に倒せるな。)


と考えているのだった。

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