占い師は胡散臭い ISTP8w7 × ENFJ 2w1 × INFJ 7w6

ネオンサインが濡れたアスファルトに反射する金曜の夜。駅前の雑踏に、色褪せた紫のテントが不自然に置かれていた。

「運勢、見ていかない? 今なら半額だよ」

「いらん。離せ」

ISTP8w7は、自身の袖を掴もうとした客引きの指を、最小限の動きで振り払った。

相手の視線すら見ず、ただ腕時計の針に目を落とす。待ち合わせまであと五分。


「まあまあ、そんなに無碍にしなくても。せっかくの縁なんだし」

後ろから歩み寄ってきたINFJ7w6が、苦笑いを浮かべながらISTPの肩に手を置いた。

その視線の先では、テントの中から柔らかな笑みを湛えた占い師が手招きをしている。


ENFJ2w1

「ちょうど予約が途切れたところなんです。少し、座って休んでいきませんか?」


「座る必要はない。疑似科学に金を払う趣味もない」


ISTPは足を止めず、吐き捨てるように言葉を繋いだ。


「統計学の誤用、あるいはバーナム効果。誰にでも当てはまる曖昧な表現を並べて、主観的真実だと言い張る。その手口に付き合う時間は一秒もない」


INFJはENFJに向け、困ったような、それでいてどこか楽しげな顔で肩をすくめて見せた。

「彼は、論理と有益さがはっきりしてないと、受け入れがたい性質なだけなんだ。悪気はないんだけど、少しばかり『真実』に厳しいんだよ」


ENFJは、ISTPの辛辣な拒絶を浴びても、表情を一切崩さなかった。それどころか、面白そうに目を細めて水晶玉の横に置かれたカードを整理し始める。


「なるほど。では『当てない』占いをしましょう。未来の話はしません」


「……当てない?」

ISTPが眉をひそめ、ようやく占い師を正面から捉えた。その足が、テントの結界の内側で止まる。


「ええ。私が提示するのは、あなたの観察記録です。それをどう解釈するかは、そちらに任せます。

……あなたは、他人の感情より先に、その場の物理的な出口を確認した。そして、最短距離を阻害するものを反射的に排除した」


ENFJはカードを一枚、裏返した。そこには剣を持った騎士が描かれている。


「あなたは常に、リスクを最小化するための即断即決を繰り返している。それは未来を知っているからではなく、今この瞬間の最適解を選び続けている結果ではありませんか?」


ISTPは鼻で笑い、テントの支柱に背を預けた。

「……それ、占いじゃなくてただの観察だろ。目の前の現象を言語化しただけだ」


「それでも、自分以外の視点から言語化されることで、見えてくる形があるんじゃないかな」

INFJが横から口を挟む。

「占いは信じるものじゃなくて、道具として使うものだよ。鏡を見るのと同じでさ」

ISTPはしばらく無言でENFJを見つめていた。ENFJは相変わらず、慈愛に満ちたような、得体の知れない微笑みを浮かべて座っている。


「……フン」

ISTPはポケットから財布を取り出すと、千円札を一瞬で卓上に置いた。

「カウンセラーや相談役としてはまともな観察眼だ。だが、それをわざわざ『占い』というパッケージで売る意味があるのか? もっと効率的な肩書きがあるだろう」


捨て台詞を残し、ISTPは雑踏の中へと踵を返した。


INFJは慌ててその後を追いながら、ENFJに向かって小さく手を合わせる。

「ごめんね、あんな言い方して。でも、彼なりに君の腕は認めたみたいだ。……ええと、お代、ありがとうございました!」


「ふふ、良いんですよ。次は彼、もっと面白い顔をしてくれる気がします」

ENFJは、声を張り上げて2人に呼びかけた。


「お二人とも、良いことがあるといいですね!」


前を歩くISTPの背中が、ほんの僅か、ピクッと硬直した。

ISTPが振り返ると、ENFJが手をブンブンを振りながら2人を見送っていた。


(……人の話、一ミリも聞いてないのか、あの女)

思考のノイズを振り払うように、ISTPはポケットの中で鍵を弄んだ。


歩く速度は、先ほどよりも早くなっていた。

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