第6話 疲労骨折

「どういうことなんだ! 杏子!」

 三反薗が真っ赤な顔で杏子に迫った。

「分かんないですよ。急に倒れたんだから」

「お前のレッスンがきつ過ぎんだよ! どうすんだよ、こんな事故。週末には社長が来るんだぞ。どう説明を・・・」

「いや。社長にはすぐに報告上げとかないと・・・」

 副店長が口を挟む。

 事務室である。お客様に事故が起こったということで対応を協議中だった。

 すると斉藤拓実が書類を手に入ってきた。

「彼女、遠藤かすみ様。20才です。先々月に入会されて、ほぼ毎日ご来場されています」

「毎日?」

「ねえ。彼女どれくらいの時間ジムにいるの? それとエクササイズの参加状況もわかる?」

と、杏子だ。すると斉藤が書類を読み込みながら答えた。

「だいたい、1日5時間ですかね」

「ご、5時間だと!?」

 三反薗が絶句する。

「さっき、会員様何人かにお尋ねしたんですが、遠藤さん、マシントレーニングをかなり頑張っていらしたようで・・・」

「何してる人なの?」

 杏子が投げやりに言った。杏子としては何も責任はないと思っている。ただ、毎日のように5時間トレーニングを続けて3ヶ月を過ごしたとなると・・・。

「たぶん疲労骨折なんじゃない?」

「疲労骨折?」

「華奢な身体でウェイトトレーニング続けて、どうせエクササイズも2つや3つ出てたんじゃないかな」

と杏子。

「その通りです。エアロ・エクササイズとズンバを必ず受講してて。最近では杏子さんのボクササイズにもちょいちょい」

「やり過ぎよ。足首じゃない?きっと。足首は筋肉ないからね。やり過ぎは直接骨に来るよ」

「遠藤様は、これもさっき聞いたんですが。あのミュージカル劇団フォールズの研究生だそうです。次回公演で役を貰えて、正式に団員になれそうだって。話していたそうです」

「そうなんだ・・・。じゃ、帰りま〜す」

 そう言うと杏子は事務室のドアを開けた。更衣室へ向かう気だ。

「おい、杏子!」

「今日はもう時間なんで。失礼しますう」

「お疲れ様でした!」

と斉藤が杏子を見送ったが、杏子は振り向くこともなく、ドアを閉めた。

 いくら正式団員になれそうだからって、怪我しちゃね。これで団員はおろか公演にも出られるかどうか、分からなくなった。

「怪我が軽けりゃいいけど・・・」

 杏子はそう言いながら繁華街を目指した。

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