《最初の森》
「貴方は先ほどの…!」
「ベリベリ売り」
「違いますー。戦士、お前は案外クソガキだね」
森にいたのは間違いなく勇者ウィンドル一行だった。こんな短期間に出会うだなんて初めてのことだ。それでもスキルでここに辿り着いたということは、何か欲しいものがある顧客ということだろう。
「ええと、マジックアイテム売り様はなぜここに?《最初の森》といえども町からはかなり離れていますし…」
遊び人、お前執事とかだろ。僕に様付けてる奴と初めて会ったぞ。そしてお前が常識人枠か。
「まぁ、いいじゃない。それが商人なんじゃない?実際、私達は彼を求めていたし」
「ほう、それは嬉しいね。一体何をお求めかな」
勇者ウィンドルの言動的にウルフを飼いたいのだろうが、一体何に手こずっているのかが分からなかった。
「ウルフを飼いたいのよ。この子」
勇者ウィンドルが手にしていた———羽交締めしていたのは、周囲の平伏しているウルフより何倍も巨大な個体だった。
「…それを?本当に?」
「ええ!でも全然大人しくならないの」
お前の飼いたがっているウルフはこの森の主だからそれはそうだろうよ。
森の主は牙剥き出し、涎をダラダラと流して勇者ウィンドルに噛みつこうとしていた。しかし彼女は一切動じない。豪胆。さすが“覇者”の異名を持つ姫様だ。
「ウィンドル様、そのウルフはやめておいた方が…」
「そうだぞ。遊び人常識人がそう言っている」
たとえ古今東西の珍品、逸品を取り揃えているミササギだとしても、そのウルフを手懐けるには少々骨が折れると感じた。
「…ハイヤー。ダメかしら…?」
「いや、ダメとは言ってないですけど…」
「私、動物飼ってみたかったの。父上も母上も動物が苦手だから、ずっと我慢してて…」
勇者ウィンドルは交渉上手だ。深窓の姫感を出して、ハイヤーを籠絡しようとしている。
ちなみに戦士と魔法使いはすでにウルフと戯れているようなので、賛成派みたいだ。
「でもそうよね。私は勇者だもんね。役目に忠実でいなきゃいけないものね———」
「…じゃあもう飼えばよろしいです!マジックアイテム売り様!何か有用な品はありますか?」
遊び人、崩れたり。だいぶ勇者に甘いパーティーだ。
「もちろん。でも予算を聞きたいな」
「5000G…でしたらどうでしょう」
金管理も行っているのか遊び人。そして5000G…日本円で5000円。もちろん旅を始めたばかりのパーティーが出す金額ではないので、さすがは姫とその一行といったところだろう。
「巨大ウルフを手懐けるって具体的にはどうするの?美味しいご飯でもあげるのかしら」
「魔法使いにしては随分優しいことを考えるね。そうだな、僕が用意できるのは暗示のマジックアイテムに…翻訳ポーション…動きを制限できる首輪…」
「どれもこれも高そうだな」
「そうだねー。残念ながら5000Gじゃ買えないね」
「私のお小遣いから追加で出すわ!」
やめなさい姫、それ税金だろう。
だからと言ってそれしか売り物がないわけでもない。予算内に十分収まり、かつあの主を手懐けられる品はある。このミササギを舐めてはいけない。
「レシピとかはどうだろう?それならもっとお安くできるよ。魔法使いがいるなら調合もできるだろうし…素材集めは大変だけど」
勇者一行は顔を見合わせた。
「はい、まいどありー」
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