第3話 セガスト
あれから1週間が経過した。
事件の翌日、直に店長へ問題提起し、私と日笠さんはひとまず休暇を貰った。因みに副店長はあれ以来出勤していない。どうやら別の地域へ去っていったらしい。これはまた別の話ではあるが、あれからだいぶ時が経った頃、風の噂によると副店長は捕まったらしい。恐らく行く先々の店で繰り返し性犯罪を行なっていたらしい。
それはそうと、今の私は大変重大な出来事に直面している。
今カノンちゃんの家にいるのだ。
経緯はよく分からない。事件の夜、連絡先を交換したとはいえ、翌日彼女から一方的にメッセージが送られてきたのは驚いた。終いには休暇を貰ったついでに『家に来ませんか?』との誘いまで。
無論、行かない訳がない。
カノンちゃんの学校終わり、駅で待ち合わせした。
フラッと駅構内の書店で本を眺めていると後ろから肩をポンと叩かれた。
「いぅい!?」
振り返るとニッコニコなカノンちゃんがいた。初めて見る顔。
「お待たせしました。」
「あ、ううん。大丈夫だよ。」
初めて見る私服。黒のスニーカー、グレーのカーゴパンツ、赤のスタジャン、人差し指には薄らマニュキュアが施されている。メイクはしていない。でも綺麗な肌。意外にもストリートだ。
(今時の若い子は多様で柔軟だなぁ。)
比べて私は黒のジャージに黒のジャージ。ちょっとブカブカ。
「無香さん……。」
(ギクッ!絶対ダサいと思われた。終わった!私の人生!いやもうずっと前から夢も希望もないから終わってるんだけどね?トホホ…。)
「カッコいいですね!」
「へっ?」
身構えていた私の価値観はあっという間に太陽の光に燃やし尽くされた。
「めちゃくちゃカッコイイです!似合います!無香さんもストリート系だったんですね!?」
「へっ?あ、ストリート?」
「はい!」
(もしや、今の私の格好が?)
あろうことか無自覚だった。家を出る際、いつも着ている服装が今のブカブカ同色ジャージだが、どうやら今の学生さんには打ってつけな流行りものらしい。
「それ!どこで買ったんですか?」
目が輝かしい。こんな物欲しそうなカノンちゃんも初めてだ。
「えっと…、古着の、セガスト。」
(終わった。古着なんて絶対セガストじゃないでしょー!?街中にあるザ•古着屋がベターじゃない?というか何となくセガストの安さと雰囲気が好みだったから買っただけだし。ああ、絶対ダサいと思われた。)
「えー!?私もセガスト派ー!?」
「へっ?ソうナノ?」
「はい!確かに古着やストリートはネットで買えますけど高いし簡単過ぎて物足りないですよね。セガストなら基本的に安いし探して見つかるあのお宝物感が堪りません!はっ!すみません1人ベラベラと!」
「ううん。何だか安心したよ。良かった。」
「ツ!……」
顔が赤い?
「大丈夫?顔、赤いよ?」
「えっ!?大丈夫です!じゃ、じゃあ家案内しますね?」
「う、うん。」
(体調悪いのかなぁ?)
私達は普通じゃない 辻田鷹斗 @ryuto7ryu
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