第4回 タブー


「そう、壊獣が現れるときに毎度観測されるあの巨人...コードネーム<カグヤ>のことです」


星野が<カグヤ>の名前を出したことで、会議室は資料を捲る音すら聞こえないほどに騒然とした。


「いや、<カグヤ>は第0種で日本国として対処、研究することはできない!なぜ研究できないことを結論として発言できる!」


各大臣が口々にそうヤジを飛ばす。しかし星野はまたニヤニヤし始めた。


「私が、国連直属の研究者...ならどうでしょうか」


ヤジが止んだ。そうだった俺もすっかり忘れていたが、星野は特巨庁の研究員である前に、大学の国際的研究者で、国連所属の研究者でもあるのだ。


「この件は我々国際連合、そして特巨庁として研究を進めています。その結果を今各大臣に配布した資料に全て載せているのです」


各大臣がみんな血眼になって資料を黙読し始める。


「我々国際連合では月の巨人を、50億年前の地球に住んでいた旧人類だと考察しています。

彼らはとても繁栄した種族であり、極秘の発掘調査では50億年前の文化の形跡も確認されています。」


星野は淡々と続ける。


「ですが、なぜ滅び、あの一体だけが月にいるのか。みなさん、ジャイアントインパクトはご存知でしょうか。ジャイアントインパクトとは約50億年前、誕生したばかりの原始地球に火星ほどの大きさの原始惑星が斜めに衝突し、飛び散った破片が集まって月が形成されたという、仮説です。

しかし、我々の現在の見解はこうです。資料4をご覧ください」


各大臣が耳を傾けながら資料をめくる。


「ジャイアントインパクトとは、原始惑星のような大質量物体が衝突したのではなく、彼らが自ら発射した核により地球の一部が破損、結果月が誕生した...というのが我々の今の見解です。」


黒田大臣が質問する

「それと<カグヤ>、なんの関係があるんだ。」


「はい、この時吹き飛ばされた旧人類はほとんどが滅亡したと考えています。しかし今観測されている<カグヤ>はどうやら金色の皮膚のような鎧をしていることがわかっており、発達した文明により、この鎧が衝撃を感知し、内部の旧人類...もとい巨人ごとコールドスリープ状態になり、地球が破損した際の月の材料の1つとしてこの<カグヤ>が取り込まれたと考えています。」


星野はさらに続ける。

「<カグヤ>が目覚めたことにより、月より壊獣が飛来するようになったのも事実であり、以上のことからこの1件は<カグヤ>が原因と、我々は考えています。」


各大臣はもう何もヤジは飛ばさなかった。

最後に黒田大臣が1つ質問を飛ばした。


「...確かに状況から見て<カグヤ>が投擲していてもおかしくない...だとするならば、なぜ壊獣は<カグヤ>のいない日本だけを襲うんだ、あとなんで壊獣は<カグヤ>が目覚めてから飛来するようになった。あと<カグヤ>が壊獣を殺した理由もないじゃないか」


星野は急に残念そうな顔をした。

「それはまだ...研究中でして...」


俺はもう見てることしかできなかった。

<カグヤ>に触れること自体がタブーとされている国会で、そんなのお構いなしに証明を続ける星野がむしろ羨ましかった。しかし、これ以上続けてももう一生平行線のままだろう。そう思った俺はもう会議を切り上げることにした。


「すみません、ありがとうございました。いい答弁...会議だったと思います。それでは本日はこの辺で...」


言おうとした瞬間だった。

ーズゥーン

重力波が来た。


「壊獣だ」

そう、その部屋にいた全員が直感した

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