第3回 コードネーム:カグヤ

「本艦損傷なし!なお報告の壊獣の生体反応、ありません!」


護衛艦「ながと」の乗組員がダメージコントロールの報告をする。しかしながら艦橋にいた人間は私含め三島以外衝撃波で意識を失っていた。

この時、私の乗艦していた「ながと」は確かに損傷がなかったらしいが、僚艦「むつ」、「あかぎ」、「とさ」は壊滅的なダメージを受けており、「浮いているのが不思議な状態」だったそうだ。


当然内閣府はこれを受けて声明を発表。しかしながら自衛隊への批判を恐れてか「海底火山の爆発的噴火」とされた。なお、壊獣に関しては空自と海自の連携によりF-35Bによる爆撃にて無力化させたと発表した。

後日俺はその発表文を読みながら、あの黄金に光る槍が貫いた光景を、「存在しなかったこと」にされていく感覚を覚えていた。


ー2071年4月9日(「槍」の事案から1週間後)・

特巨庁会議室


「星野、あの政府の発表見たか」


大臣席に座りながら前にいた星野にそう問う。


「えぇ、ですがあの高度で、あの角度。F-35Bの兵装では説明がつきません。ちょっとしたミリオタならすぐに政府の嘘が見破られるのでは?」


「だよなぁ、無理がありすぎる。まぁ例の球体に関して観測できずに飛来を許したから、政府としても安全保障上隠したいんだろうが」


「そうですよね。あ、秋山大臣、まもなく総理含めた例の件の会議始めますよ」


「よし、やろうか」


今日は特巨庁会議室にて例の球体事件に関する研究結果報告含めた今後の会議がある。俺はドアを開け、総理含め各省庁の大臣を席に案内した。


「では、よろしくお願いします。総理大臣の小林です。本日は特巨庁にて例の観測できなかった壊獣についての有識者を交えた会議を執り行いたいと思います」


小林敏夫総理大臣。俺が内閣に入った頃から総理大臣を務めている方で、黒田防衛相と共に特巨庁設立に関わった1人だ。


「ではまず特巨庁代表秋山俊樹大臣より、特巨庁の研究結果の報告をしていただきます」


「ご紹介に預かりました。特巨庁秋山です。本日はよろしくお願いします。では、お手元資料1をご覧ください」


各大臣が手元に置かれた資料をめくり始める。


「これが、海底に沈んだ例の観測できなかった球状の壊獣の海底観測による写真です。発見時は球状でしたが、突如我々の前で形状を変え、「槍」のような形状になり、奈々原に上陸した壊獣の胸部を貫きました。研究によりますと、この壊獣に細胞が確認できず、そもそも壊獣ではなく物体として扱うべきだという報告も受けています。以上の中から質問のある方はいらっしゃいますか挙手を願います」


そういうと、静かに黒田防衛相が挙手した。


「黒田くん」


議長が黒田大臣に質問を許可する。


「もしこれが壊獣ではなくモノだとするならば、これはどこから飛来したものなのかわからないのか?成分分析すればわかるんじゃないか?秋山くん」


「秋山くん」


俺も議長に名を呼ばれ解答を促される。


「はい、研究員によりますと....


と言おうとすると星野が急に自分でプレゼンを始めた。


「えぇ、成分解析は終わっています。その研究結果から我々は古代文明により作られた可変物質武器だと考えています。」


「根拠は?」


黒田大臣が尋ねる


「はい、この槍を分析した結果50億年前のものであると言う結果が出ました。そして驚きの事実として、この槍の主成分は人の爪などを構成するケラチンという繊維状のタンパク質であると言う結果が出ています。ですからこの古代文明ではこのタンパク質をなんらかの方法で分子単位で変形させ、武器として使用していると考えています」


一通り言い終わると、黒田大臣がまた質問をする


「主成分がケラチンであるなら、やはりこの槍自体が生物である可能性があるのではないか?」


するとまたニヤニヤした顔で星野が答える


「いえ、これは明らかに生物ではありません。

資料2をご覧ください。これはこの槍のX線写真です。ご覧のように内臓などがなく、生物的条件を満たしていません」


「では質問を変えよう、だとするならばこの武器は誰が投擲したと考える?」


すると星野は真面目な顔つきで語り始める。


「月で観測される...例の重力波を発生させる80m級の巨人の影は、みなさんご存知だと思います...」


各大臣が息を呑み始める。


「そう、壊獣が現れるときに毎度観測されるあの巨人...コードネーム<カグヤ>のことです」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る