第2回 槍
「一体俺の知らないところで何が起こってるんだ?」
秋山がそう叫ぶ。
大体の壊獣事案で発生する物事に報告との差異はつきものなのだが、それは壊獣の行動によるものが多い。しかし今回は明らかに飛来した壊獣とは別件であることがほぼ確実であった。
続けて防衛省から連絡が来る。
[特巨庁の研究者と報告員を現場の護衛艦で視察させ、この報告にない不明な物体の処置について特巨庁としての意見を仰ぎたい]
「このメールの文面からして、打ったのは黒田防衛相その人だろう。」
昔からの付き合いで大体予想がついた。だとすると現場は防衛相が直々に連絡をよこすほど緊急性を要すと言うことだ。もちろん普段の壊獣事案が緊急性がないと言うわけではない。ただ、今回はイレギュラーの事態すぎる。1体の壊獣対処中に2体目が観測をすり抜けて飛来した可能性があるからだ。安全保障上の問題もある。
「星野くん、悪いが視察に行くためにヘリを手配するよう官僚に掛け合ってくれないか。俺も視察に行く。」
「了解しました。その視察、私も行けるんですよね?」
「もちろんだ。」
そう言うと星野はすぐに官僚に掛け合い、ヘリを手配してくれた。
「ありがとう星野くん、では急いで奈々原湾へ視察へ行くぞ」
「えぇ、もちろん。私は壊獣がこの目で見れるだけで大満足ですから。」
パイロットにヘリの扉を開けてもらい、俺たちは急いで奈々原湾へ視察に向かった。
自衛隊が奈々原に上陸した壊獣を海へと誘導し、この視察までの間足止めしてくれているのだ。
早く行かなければ、そのうち兵器が尽き、謎の球体どころか壊獣まで対処できなくなってしまう。
そんなことを考えているうちに、ヘリは間も無く護衛艦のヘリポートに着艦した。
「お疲れ様です!」
そう言って外から扉を開けて敬礼してきたのは対処にあたっていた護衛艦「ながと」の三島艦長。
実は防衛大学の同期だ。
「三島、やめてくれ恥ずかしい」
「今は立場がお前のが上だからな」
「そうか。ありがとう。では早く視察させてくれ。手遅れになるかもしれないんだろう?」
「あぁ、案内する。着いてきてくれ」
そう言うと俺と星野は球体がよく見えるという艦橋デッキに通された。
「あれは... なんだ....?」
ずっと口を閉じていた星野が口を開きそう呟く。
俺は壊獣を攻撃するミサイルの黒煙で全く見えなかったが、攻撃が少し落ち着いた瞬間ようやく見えた。
「黒い球体が...空中に浮いている」
それ以上言いようがなかった。直径20mほどの球体が壊獣の斜め上くらいに浮いている。
内部は鼓動するように金色に内側から光っており、壊獣とは明らかに違った雰囲気に口が開いて塞がらなかった。
「星野くん、これについてどう思う。」
三島が星野に問う。
「成分がわからないのでなんとも言えませんが、
レーダー非捕捉という点から、新規のステルス性をもった特異壊獣と判断せざるを得ません。今のところは」
星野は淡々と答える。だが目が動揺を物語っていた。それは専門家でも本当に見たことがない、考察のしようがない産物であることを証明していた。
「星野によるとこうらしいが、秋山、特巨庁として指示をくれ。もう艦隊のミサイルが底を尽きる。」
三島が判断を急かす。どうやら防衛省に通している暇もないほどに兵器が持たないらしい。この時は特巨庁が判断ができると言う決まりがある。
「俺は...」
そう言おうとした瞬間、すごい衝撃波が走り、黒い球が黄金に輝きながら形を変え、槍のような形になり、壊獣の胸を貫いた。
ーズドォォォォォン
船を酷く揺らし、立ってられないほどの大きな衝撃。なんと言うか体が圧縮される感覚があるほどに空間全体が揺れた。
「何が起こった!状況は!」
三島の声が艦の無線で響く。
「本艦損傷なし!なお報告の壊獣の生体反応、ありません!」
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