第2話 勇者にされてしまうという災難
翌朝玄関の戸を開けると、テオは町の中心で拍手に迎えられた。
「勇者様だ!」
「本物だぞ!」
「昨日教会に神のお告げが——!」
「違います! 人違いです!」
叫んでも誰も聞いていない。
花を投げられ、肩を叩かれ、知らない老人に満面の笑みで手を握られる。
人混みの向こうから、あの宇宙の神が腹を抱えて笑いながら近寄ってきた。
「いやあ、盛り上がってるねえ!」
「あなたのせいでしょうが!!」
「もちろん!」
自信満々に頷かれる。
「なんでこんなことするんですか!」
「だから言ったでしょ。君は勇者になるんだ」
「僕は望んでません!」
「そこがいい」
テオは言葉を失った。
王都から来た使者が、人ごみの最前に出てきて金色の巻物を読み上げる。
「神託により、テオ殿を勇者と認定する——」
「神託って誰のですか!」
「宇宙の神だよ!」
後ろで手を振る本人。
その日、テオの人生は正式に詰んだ。
祝賀会、贈り物、勇者用の剣。
どれも断ったが、断るたびに「謙虚だ」と感動される。
「最悪だ……」
夜、部屋で頭を抱えるテオに、宇宙の神はベッドに逆さまに浮かびながら言った。
「そんなに嫌?」
「嫌です。重い。怖い。期待されるのが」
「ふうん」
神はくるりと回転して、天井に座った。
「じゃあ聞くけどさ」
「なんです」
「もし君が、本当の本当に勇者だったら——
世界を救うために、何でもする?」
テオは少し考えてから答えた。
「……しません」
「即答だね」
「世界のために人を殺すとか、正しいから従えとか、そういうの、無理です」
神はしばらく黙っていた。
そして、いつもの軽い調子で言う。
「いいね」
「……は?」
「最高だよ、それ」
テオは睨んだ。
「僕をからかってるんですか」
「違う違う」
宇宙の神は、にこにこ笑う。
「君はね、勇者に向いてない」
「でしょうね!」
「だから選んだ」
その言葉の意味を、テオはまだ理解できなかった。
ただ一つ確かなのは——
この自称・宇宙の神は、
魔王を倒す話を、一度もしていない。
それが、妙に引っかかっていた。
世界は"勇者"を求めているけど、どうやら神は違うらしい ミヤザキ @miyazaki_01
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。世界は"勇者"を求めているけど、どうやら神は違うらしいの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます