メアリーとこれからのおはなし

 研究所に戻るなり、ロジャーは体を半分に折る勢いで頭を下げた。

「誓って、もう人間以外とはヤらん!!」

その言葉の意味はメアリーと、ついでにテレンスにもわからなかったが、

「ロジャー様、それ、何回目ですか?」

冷ややかな目をしたニコラスは何らかの事情を知っているようだった。


 よくわからないが、ニコラスの冷ややかな目から察するに、どうやら、あのハリケーンはロジャーのせいだったようだ。

「そもそも、ハリケーンなど、あと千年は発生しないはずだったのだ。せいぜい『竜巻』がいいところだ」

すっかり落ち着いたロジャーがお茶を飲みながら解説したところによると、本来、海は普通の状態ではあんな雲を発生させることはない。ところが、世界が発展すると、何だかんだあってから、海の水の温度が上昇し、あんなハリケーンが起こる可能性が出てくるそうだ。怖い。


 あのマロリー領の漁港で、みんなに囲まれたメアリーは、つい、自分が聖女であることを話してしまった。別に隠すようなことではないかもしれないが、話したらみんなが混乱すると思っていた。なのに、そんなことは起こらなかった。

「ありがとうございます、聖女様!!」

「これからも、この国をお守りください!!」

むしろ、いろんな人たちから笑顔で声をかけられた。

「私はまだまだ勉強中なので、もっとみなさんのお役に立てるようにがんばります」

それににっこりしながら答えたとき、メアリーはもっとしっかりしないといけないと思った。

 だから、メアリーはこれまでよりもたくさん勉強した。自分が知らないことを知り、知りたいことを探して、またそれを知る。それが「研究」だ。研究して得た知識は、お空と「お話」するときにも、「お願い」するときにも役に立つ。


 あのハリケーンの日から二年後、メアリーは十八歳になった。もう成人だ。その途端、

「メアリー、結婚してくれ」

ロジャーから求婚されたが、

「ごめんなさい」

メアリーはすぐさま断った。

 しょんぼりするロジャーは、初めて会ったときから容姿が変わらない。髪の毛やヒゲや爪が伸びたりすることもない。それについても隠されている。そんな隠しごとだらけのおじさんとは結婚できないのだ。

「でもね、私、ロジャーさんのことが大好きだから、これからもお友達でいてくださいね」

もうすっかり大きくなった大人のメアリーは、謎のおじさんににっこりした。


 この二年の間に少しだけロジャーに魔術を習っていたメアリーは、「飛行」という空を飛ぶ魔術を使えるようになっていた。これは便利だ。週末ごとに気軽に実家に帰ることができる。

「ただいま!」

満面の笑みでメアリーが扉を開けると、みんなが同じ笑顔で出迎えてくれたりする。


 今のメアリーの一番の関心ごとは「お茶」の栽培だ。ものすごく東にあるガネーシャ神国という所から輸入しているお茶の苗を持ち帰り、それをこの国で栽培するのだ。それは「交配」ではないかもしれないが、貴族がお茶をたくさん飲むので、国で栽培した方が便利だと思った。

「これだ」

その苗は船で運ぶとダメになってしまうのだが、黒い「魔法陣」で行き来できるロジャーが簡単に持って来てくれたので、何とかなりそうだ。


 そうやって、メアリーは楽しく過ごしている。お空にお願いするのも少しずつできるようになってきた。

(今日も曇ってるね。でも、いつもどおりだね)

でも、お話するのが一番楽しいと思っている。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

メアリーとおてんきのおはなし 姉森 寧 @anemori_nei

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画